オリンピックへの道BACK NUMBER
メダル獲得には経済的支援が必須!
冬季アジア大会にみる強化費の意味。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/02/15 10:30
スピードスケート男子500mで1回目、2回目ともに1位となり完勝した加藤条治。3位の長島圭一郎と共に表彰台にあがった
アジア大会のメダルをスポンサー獲得の材料に!?
背景には、競技面で重要であるという考えだけでなく、規模の大きな総合大会で活躍することで新たなスポンサーの獲得につなげたいという思惑があったようだ。
出発前、ある選手はこう語っていた。
「本来なら世界選手権に出る方が、意義はあるかもしれません。でも、世界選手権よりも総合大会で活躍してもらった方が資金を獲得しやすいと説明を受けました。だから納得して、アジア大会に出たんです」
実際、バンクーバー五輪前よりもはるかに強化費を減らした種目は少なくない。だから、やむをえず合宿期間を短縮する、回数を減らすなど強化の縮小を図らざるを得ない場合も出てくる。費用の自己負担を強いられる選手も多くなり、競技生活の続行そのものを真剣に考えざるを得ないケースもある。現状を打開するために好成績を──そんな目的も今回のアジア大会にはあったのだ。
潤沢な強化費が競技の躍進につながるシビアな現実。
そして橋本聖子団長は、以前から何度も口にしている。
「メダルを期待するからには、今の強化費では難しい」
オリンピックになると、メダル獲得が期待され、獲れなければ批判される。だがそれに見合う資金はない。十分な支援がないままに成績を求められることに、現場では苛立ちもある。
今大会でトップになった開催国カザフスタンは、前回の金6、銀6、銅6の計18個から金32、銀21、銅17の計70個と、驚異的な躍進を遂げた。資金を豊富に強化にあてたからにほかならない。北京五輪での中国、バンクーバー五輪でのカナダのように、オリンピックの開催国が躍進するのも、圧倒的な強化費が理由である。
もちろん、現場の努力は欠かせないし、現場で戦う人はあきらめてもいない。
しかし、結果を求めるからには、それなりの支援を打ち出すことも大切ではないか。
そう思わずにはいられない。