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メダル獲得には経済的支援が必須!
冬季アジア大会にみる強化費の意味。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/02/15 10:30
スピードスケート男子500mで1回目、2回目ともに1位となり完勝した加藤条治。3位の長島圭一郎と共に表彰台にあがった
1月30日から2月6日にかけて、カザフスタンで行なわれていた冬季アジア大会が閉幕した。
日本が獲得したメダルは、金が13、銀は24、銅が17。金メダル数、メダル総数ともに、カザフスタンに次ぐ第2位のメダルを獲得した(金メダルは韓国と同数の2位タイ)。前回大会と比べ、金メダルの数は等しく、総数では36個から54個と大幅に伸ばした。
メダル総数は、自国開催の大会を除けば、史上最多である。大会前に目標としていた「前回を上回る成績」もクリアすることができた。
アジアの大会といっても、決して侮ることはできない。
例えばスピードスケートの500mは、バンクーバー五輪の上位4名がそろうハイレベルな争いであった。その中で加藤条治が優勝した価値は大きい。
中国、韓国という世界の2強を相手にメダル6個を獲得したショートトラックも、大会前はこのところのオリンピックで不振が続いていただけに、復活の兆しが見える成績となった。
クロスカントリーでは、石田正子が2冠、夏見円も金メダルと地力を発揮し、男子でも吉田圭伸が2冠と、計5個の金メダルを獲得している。
また、フィギュアスケートの村上佳菜子、スピードスケートの中村奨太と、2人の10代金メダリストの誕生も、明るい話題である。
これらを考えてみても、成果をあげた大会だと言えるだろう。
日本選手団の橋本聖子団長が「頑張ってくれました」と称賛するのもうなずける。
ソチ五輪へ向けての第一歩として位置付けられたアジア大会。
では、今大会の日本の健闘の理由はどこにあるのか。
ひとつには、ショートトラックに象徴されるように、バンクーバー五輪で不振に終わった種目が、ソチ五輪へ向けて巻き返すための第一歩と位置づけて取り組んだこと。
そして、スケジュールをやりくりして主力選手をそろえた種目が多かったことにある。
ウインタースポーツの場合、この時期はワールドカップや世界選手権など国際大会が目白押しだ。その中でも、アジア大会を軽視しないように工夫し、選手団の編成を行なったのだ。
世界選手権とほぼ日程が重なったモーグルが、里谷多英、伊藤みき、附田雄剛、上野修の実力者をアジア大会に派遣し、村田愛里咲、遠藤尚ら若手を世界選手権に出場させたのはその一例である。