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高橋藍が「自信を失う瞬間が怖い」と語った理由「まだ僕は挫折らしい挫折を経験していない。挫折の意味すらわかっていないかも…」《NumberTV》
posted2025/03/27 11:11

バレボール日本代表の中核を担う高橋藍がNumberTVで自らの「挫折」について明かした
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Asami Enomoto
ブランからの言葉「お前なら、やれる」
「言いたくないことも言わなければいけない。しんどかったです。でも、そういう自分を健斗もチームの仲間も理解して、ついてきてくれた。仲間の存在がなかったら乗り越えられなかったと思います」
高橋のサクセスストーリーが始まるのはここからだ。本格復帰を遂げた中島とのコンビでチームをリード。春高では、攻守両面で圧倒的な総合力を見せた東山を1セットも失うことなく完全優勝に導く。直後に選出された日本代表の合宿が始まると、当時の代表コーチで、パリ五輪で監督を務めたフィリップ・ブランに直接告げられた。
「(石川)祐希の対角には藍が入るんだ。お前なら、やれる」
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期待の高さの現れではあるが、春高優勝で得た少しの自信もブランからの厳しい指導であっという間に砕かれた。
「パスが1本乱れれば怒られるし、スパイクの打ち方も一つ一つしつこく注意される。ただでさえすごいプレッシャーがある中で、やりたいようにできない。代表もバレーも楽しくなかったです」
合宿時に支え合ったのは、高校時代にライバルとして立ちはだかった大塚だ。日本代表でも同じアウトサイドヒッターのポジションを争う2人だが、合宿への参加はどちらも初めて。練習を終えるたび、いつも2人で励まし合った。
「『あんなに口うるさく言われたらマジでむかつくよな。藍、全然悪くないから頑張れよ』って。普通に考えたら、僕を倒して自分がコートに立ちたいと思うのが一番であるはずなのに、いつも達宣さんがいてくれたから頑張れました」
「自信を失う瞬間が怖い」
自信がなかった少年期を経て、高橋は今や日本を代表するバレーボール選手へと成長を遂げた。挑戦を続ける中、今は「自信がある」と胸を張ることができるが、だからこそ抱く思いもある。
「自信を失う瞬間が怖い。まだ僕は挫折らしい挫折を経験していないし、そもそも挫折の意味すらわかっていないかもしれない。いつか、今ある自信を失う瞬間が来たら、きっとそれが僕にとっての挫折の時。だから、自分のバレーボール人生の勝負はこれからだと思うんです」
勇気と信念を持って、新たな一歩を踏み出してきた。軽やかに、だが確実に。
いつか訪れるかもしれない挫折の時も、恐れず、逃げずに乗り越える。その強さがあると、誰より自分が信じている。
<前編から続く>
【番組を見る】NumberTV「#17 髙橋藍 つかんだ自信が揺らぐとき。」はこちらからご覧いただけます。
