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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「これが人生のピークになるかも…」東大“史上最速ランナー”秋吉拓真が箱根駅伝で感じた胸の内…「究極の文武両道」選手の“気になる進路”は?
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2025/02/04 11:03

7区を走った明治学院大の栗原舜から襷を受ける東大3年の秋吉拓真。途中までは区間新記録をうかがうペースで突っ込み、好走を見せた
記録は1時間04分45秒。区間7位相当の走りで、区間賞を獲得した青学大の塩出翔太とのタイム差は31秒だった。
「ある程度、よくやったのかなという思いと、正直、悔しいという両方の思いがありました。レースを振り返ってみると、19kmから21kmまでの間は、1km3分10秒くらいかかってしまい、この2kmで20秒くらいのロスがありました。それがなければ、1時間04分10秒くらいも狙えたかと思いますが、あの坂のキツさは下見をした程度では分からなかったです。やはり、レーススピードで体感しないと見えてこないものはありますね」
レース後の心境は…「人生のピークになるかも」
走り終えてからの反響は、これまでのレースとはまったく違ったものだった。
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「バイト先が模試を運営している会社なんですが、slackでつながっている仲間がメッセージをくれたりしました。うれしかったですね。それと、いちばんの思い出は友だちと再会できたことです」
中継所に到着してみると、手違いで秋吉の荷物が届いていなかった。
「荷物を探して半袖短パンでうろうろしていたら、小学校のときの友だちとバッタリ会えたんです。僕が8区を走ることを知って、わざわざ中継所まで応援に来てくれていて。中学校卒業以来の再会で、『寒くないの?』と言って上着を貸してくれました(笑)」
秋吉にとっては、すべての体験が新鮮で、感動的だった。
「大げさではなく、人生で初めて『これが人生のピークになるかもしれない』と思いました」
箱根駅伝が終わり、日常が戻ってきた。
秋吉は東大の本郷キャンパスで機械情報工学を学び、そして走り続けている。箱根駅伝へと向かうプロセスは、秋吉の実力を伸長させてくれた。
「振り返ってみると、12月上旬の16kmタイムトライアルが自分にとって大きな財産になりました。学生連合チームの小指(徹)監督の16km48分半という設定が絶妙で、力のある選手が力を出し切らず、そこから状態が上がっていくようなメニューで。それにこの16kmで、前半に余裕を持ちながら突っ込んで、中盤以降は粘るという新しい武器を手に入れることができました」