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「区間新を狙えると思っていましたが…」東大“史上最速ランナー”が奇跡の箱根駅伝を走るまで 予選会まさかの「11番手」に落胆も…下剋上ウラ話

posted2025/02/04 11:02

 
「区間新を狙えると思っていましたが…」東大“史上最速ランナー”が奇跡の箱根駅伝を走るまで 予選会まさかの「11番手」に落胆も…下剋上ウラ話<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

10月の予選会では23度という季節外れの暑さに苦しんだ東大の秋吉拓真(3年)。幸運にも選考方針が変わったことで予選会後も可能性が残った

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Yuki Suenaga

 今年も大きな盛り上がりを生んだ年始の箱根駅伝。優勝争いとは違ったところでファンの注目を集めたのが、関東学生連合チームの8区を担った秋吉拓真だ。いわずとしれた日本最難関の大学である東大所属ながら、一時は通過タイムでトップを走るなど、鮮烈な印象を残した。そんな秋吉が夢の舞台に至るまでには、どんな紆余曲折があったのだろうか。《NumberWebインタビュー全2回の1回目/つづきを読む》

 東京大学の理科Ⅰ類で機械情報工学を学ぶ秋吉拓真は、「箱根駅伝ランナー」となった。

 強豪校のように合宿所に住んでいるわけではない。2年生まで、秋吉は下宿先の井の頭線・三鷹台駅から東大駒場キャンパスまで、およそ10kmを走って通学していた。

 そして大学3年を迎えた昨年、赤門のある本郷キャンパスでの授業が増えるため、秋吉は引っ越しをした。現在は、食事も栄養を考えながらの自炊がメインだ。

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「国技館のある両国です」

 やっぱり、ジョギング通学? と質問すると、

「ハイ(笑)。だいたい片道で5kmくらいです。それに隅田川沿いは信号がなく、継続して走れるのがいいですね。国技館を見ながら、というのもなにか非日常的で楽しいですし」

 秋吉は、1500m、5000m、1万m、ハーフマラソンの4種目で東大記録を持つ。2024年度の最大の目標は「箱根駅伝を走ること」だった。

「3年生になってからも練習は順調で、力はついてきているという自覚はありました。ところが、その成果をトラックのタイムで表現できなくて。状態がいいのにタイムが出ないつらさはありました。ただ、前回はなかった学生連合チームが今回は編成されることが決まり、箱根駅伝を走ることが大きなモチベーションになりました」

東大「史上最速ランナー」として臨んだ予選会

 10月19日の予選会を前に、「東大から2人の箱根ランナーが誕生するのでは?」という期待が高まっていた。秋吉と、博士課程4年生の古川大晃である。

「レース前、古川さんと『日本人の先頭集団についていく』というプランでいこうと話していました。ただし、あの日は気温が高くて……。危険な暑さでした。それなのに古川さんは、いきなり突っ込んでいったのでびっくりしました(笑)。でも、ここしばらく古川さんには負けていなかったので、正直、後半に追いつけるだろうと考えていました」

【次ページ】 まさかの予選会「11番手」も…起死回生の選考方針

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