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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「これが人生のピークになるかも…」東大“史上最速ランナー”秋吉拓真が箱根駅伝で感じた胸の内…「究極の文武両道」選手の“気になる進路”は?
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2025/02/04 11:03

7区を走った明治学院大の栗原舜から襷を受ける東大3年の秋吉拓真。途中までは区間新記録をうかがうペースで突っ込み、好走を見せた
秋吉は通過順でいえば18番目、17番目の神奈川大とは2秒差でたすきを受けた。
「最初、突っ込むことにためらいはありませんでした。(※学生連合のメンバー選考で行った)16kmのタイムトライアルを走った時に、前半に突っ込んだとしても後半に調整できるという感覚をつかんでいたからです。自分としては余裕を持ちながら前半で貯金を作り、粘れれば区間新を出せると思っていました」
日本テレビの放送で、最初のチェックポイントである6.7kmの茅ケ崎の通過順位が流される。
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1位・秋吉拓真、19分49秒――。
「最初の5km、たしか14分半を切るペースだったと思いますが、余裕がありました。よし、遊行寺の坂まではこれで行こうと思い、狙い通りに進みました。ところが、坂を上り始めてから3歩目で、『あ、これはキツい』と感じました」
1歩目、2歩目は「これなら大丈夫だ」と思った。だが、3歩目でダメージが来た。遊行寺の坂、それは秋吉にとって難所となった。
「これまで経験したことのない違和感を腰のあたりに覚えました。痛いとかじゃなくて、腰に酸素が回ってないという感じで。体の強張りも出てきて、本当に苦しかったです」
何とか耐えた「遊行寺の坂」。しかし…
遊行寺のチェックポイントでは、東洋大の網本佳悟がトップとなり、秋吉は6番目で7秒差となった。区間新は遠のいたが、まだまだ区間賞相当のタイムは狙える。
「遊行寺の坂ではある程度タイムが落ちるのは想定内でした。実際、平坦になってから1km3分のペースに戻せました。ですが、最後の最後にもう一度、坂があるんです。ここで完全に足が止まりました。上りがあって平坦、そしてもう一度上りという変化に体の筋肉が対応できませんでした」
苦悶するなかで、最後に救いが待っていた。東大でともに練習する古川大晃が戸塚中継所で手を挙げて待っていてくれた。
「古川さんが見えたとき、自然と笑顔になりました。苦しかったのが、一瞬にして楽しくなって(笑)」
たすきを渡す。東大で学ぶ2人のリレーだ。