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「悔しい」「実力が足りてない」張本美和が完敗後に号泣…驚異的な成長を続ける16歳は、なぜそれでも早田ひなに勝てなかったのか? 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2025/01/28 17:01

「悔しい」「実力が足りてない」張本美和が完敗後に号泣…驚異的な成長を続ける16歳は、なぜそれでも早田ひなに勝てなかったのか?<Number Web> photograph by AFLO

卓球全日本選手権の決勝で早田ひなに敗れた直後の張本美和

1ゲームすら奪えず「すべての面で…」

 2日後に迎えた決勝の第1ゲーム、張本のサービスから始まり、2-0とリードする。出だしはよかった。

 だがここからの早田は強かった。9連続失点を喫し、3-11で失う。第2ゲームも6-11。第3ゲームこそ11-10とゲームポイントを握ったものの逆転され、11-13。第4ゲームは中盤から引き離され、6-11。1ゲームも奪うことはできなかった。

「(早田は)すべての面で強かったです」

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 張本は試合を振り返ってこう語っている。言葉の通り、早田に隙はなかった。早田の左腕の状態は怪我をする前には戻っていない。「パリオリンピックまでの自分に戻ることはできない」。自身を客観的に捉え、できないことはできないと割り切っていた。

 その中で光ったのは、早田のうまさだった。

 練習量をおさえた分、戦術や技術の動画を観る時間を増やすなどして、できる努力を重ねた。

 そんな早田に、張本はフォアミドルを攻められた。早田の繰り出す回転量の多いサービスのレシーブにも苦しんだ。ときに早田の、読みを外すようなプレーにも翻弄された。

 早田から攻められるラリーが多く、無理なカウンターを狙わざるを得ない場面もあった。また体勢を崩されてからサイドに打たれるケースもみられた。

「全体的な実力が足りていない」発言の真意

 張本の出来が悪いといった話ではなく、早田のうまさを含めた強さが随所に光っていた。張本はチャンスを得る機会がなかった。

 昨年と比べ、「今日は負けて悔しい気持ちの方が多いです」という。

 だから、こう語ってもいる。

「(早田は)何回やっても、やっぱり強いなという印象があります。全体的な実力が(早田に)足りてないなと思います」

 張本の言葉は実感そのものであっただろう。

 この1年間で示した成長に間違いはない。今大会でも、例えば準決勝の伊藤との試合では、伊藤の速攻にひるむことなく攻撃力を発揮し、ストレート勝ちという結果につなげた。容易ならざる相手にみせたのは、培った地力だった。

【次ページ】 張本の中に生まれた“1年前からの変化”

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