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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「韓国でも井上尚弥の記事ばかりだった…」逃げなかったキム・イェジュンを母国メディアはどう報じた? “かませ犬”が韓国ボクシングに投じた一石
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キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph by東京スポーツ新聞社
posted2025/01/28 11:03
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井上尚弥の一夜明け会見にサプライズで登場したキム・イェジュン
メディアの反応は予想通りだったが、驚きをもってこの試合を見つめていたのが、在日コリアン3世で元WBA世界スーパーバンタム級王者の李冽理(リ・レツリ)だ。
「驚いたのは、しっかりとした技術で井上を相手に本気で“勝ちに行っていた”ことです」
来日したキムが調整を行っていた横浜光ボクシングジムの所属だったこともあり、周辺情報に詳しかった。
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「キムの実力的には日本ランカーレベルで、井上に対抗できる選手ではないとの話は周りからよく聞いていました。急きょ決まったので韓国陣営も応援団の段取りはできなかったでしょう」
実力差で敗れたとはいえ、称えるべき点もあった試合を振り返る。
李を驚かせたキム・イェジュンの作戦
「一般の選手だったら玉砕覚悟で突っ込んで、一発当たればいいかなくらいの戦い方をすると思うんです。“万が一”というのはそういう展開しか出てこないから。でもキム選手は距離を見て、技術を使って対応していた。自分としては心の中で『そうじゃないだろ』と思っていたのですが、技術面でしっかり対応もできる選手だなと感じました。
もう一つ称えるなら、本当に短いスパンで体重調整をしてきたこと。大きなチャンスが転がってきた反面、“かませ犬”と見られ、本当に見ていられない試合になる可能性もあったわけです。勇気ある決断だったと思います。十分な実戦練習もできておらず、無理なお願いの中で、それでも体を作ってリングに上がったのは素晴らしかったと思います」
さらに今回の試合を受けた決断の意味を、単なる個人の判断だけではないことも強調する。
「世界戦となると国を背負って戦うわけです。国の代表として戦うことを考えるとものすごく勇気がいったと思います。ましてや韓国はその意識が強いし、相手はライバルの日本。簡単に負けるわけにはいかないし、噛みついてやるという意気込みは伝わってきましたよ」