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「施設育ちの少年が井上尚弥と戦うなんて…」密着カメラマンが知るキム・イェジュン壮絶ボクサー人生「ひとりで生きるためにボクシングを始めた」

posted2025/01/28 11:04

 
「施設育ちの少年が井上尚弥と戦うなんて…」密着カメラマンが知るキム・イェジュン壮絶ボクサー人生「ひとりで生きるためにボクシングを始めた」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

井上尚弥と対戦したキム・イェジュン(32歳)

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キム・ミョンウ

キム・ミョンウKim Myung Wook

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Hiroaki Yamaguchi

 1月24日、4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥に挑んだキム・イェジュン(32歳、WBO11位)。4回2分25秒に強烈なワンツーを浴びてリングに崩れ落ち、KO負けを喫したが、モンスター相手に愚直に立ち向かう姿は多くの人の心を掴んだ。キムのドキュメンタリー映画のために密着したカメラマンに舞台裏を聞いた。【NumberWebレポート全2回の後編】

 激闘から一夜明けた1月25日、キム・イェジュンは横浜の大橋ジムで行われた井上尚弥の会見に現れた。

 試合後、敗者が勝者のもとを訪れるのは珍しいが、「チャンピオンにあいさつをしたかった」と本人たっての希望だった。笑顔で井上と話すこうした行動も、日本のボクシングファンには好印象を与えたはずだが、試合を終えた直後の夜とは雰囲気が違った。

「敗れたショックが大きかったのでしょう。いつになくトーンダウンしていました。格上とはいえ、勝つためにやってきたわけですから」

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 落胆するキムの様子を語るのは、近くでカメラを回し続けているディレクターのムン・ジュニョン氏だ。

キムに密着してきたカメラマン

 プロデューサーであるパク・ジョンボム氏がキムのドキュメンタリー映画を企画し、2017年から密着。2019年からはムン氏も加わって2人で撮影を続けている。全3部作を10年計画で進めるプロジェクトで、上映は未定だが、韓国メディアが数少ない中、キムが人生を懸けたビッグマッチにも密着していた。

「井上選手に敗れて気持ちが落ちているとはいえ、彼との話の中で最も安心したことは、手術した部分が幸いにもひどくならなかったこと。もともと、右ヒジと右肩腱板を負傷していて、手術も3回しているのでまた痛めていないかと心配していたのですが、安静にしていれば回復見込みが立ちました。身体に問題がなければ、また試合に向けて練習を始める気持ちになりますからね」

 気持ちが晴れるまではもう少しの時間が必要だが、再起に向けて準備を進めていくことは確かなのだろう。

【次ページ】 「井上戦が決まった時、冷静なキムが興奮していた」

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