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甲子園春夏連覇の“琉球トルネード”に大学で悲劇が…島袋洋奨32歳に問う「高卒でプロの選択肢はなかったか?」意外な答え「微塵も後悔してません」
text by
松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/01/10 11:03
興南高校のエースとして甲子園春夏連覇を達成した島袋洋奨。独特なトルネード投法から繰り出されるストレートで対戦相手を圧倒した
「自分のピークとしては技術的にどこだろう……。大学1年時も良かったし、2年生になると力もついてきてスピードも出ていた。高校で言うのであれば、2年生ですかね。2年の夏の甲子園で今宮(健太/ソフトバンク)さんたちとやったときとか、あの頃は自分の中で凄く楽に投げられたというか、狙ったところに簡単に決めることができました」
2009年夏の甲子園一回戦で、興南は明豊と対戦した。明豊の大黒柱は、遊撃手兼投手で三番の今宮健太。興南の2年生エース・島袋は初回2アウトランナーなしで今宮を迎える。センバツに続き二度目の甲子園の島袋は、リラックスした状態からトルネード投法で思い切り体を捻り、ストレートで押しまくる。2ボール2ストライクで迎えた5球目、アウトコース低めいっぱいに決まる145kmのストレートで見逃し三振。後にソフトバンクで同僚となる2人の対決は島袋に軍配が上がった。興南は3対4で明豊に敗れたが、島袋にとってはこの敗戦が甲子園最後の黒星だった。
「周りからも言われたんですが、自分はピンチになった時に気持ちがボールに乗り移って投げるところがある。そこは自分でも認めてあげたい部分でした。よく野茂さんのトルネードを参考にしているんじゃないかと聞かれたんですが、そもそも(軸足が)プレートに対してまっすぐじゃないし、身体も柔らかくないのであの投げ方は到底真似できない。意識したことは正直ないですね。自分がずっと意識していたのは、二段モーションからのヒップファースト。溜めていたものを一気に出すイメージで、しっくりきていたのが2009年辺りだったのかなと思いますね」
「130km台のボールでも空振りが取れていました」
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翌2010年の甲子園で、島袋はまさに“無双状態”に突入する。173cmと上背はないものの、上半身を真後ろに捻る“琉球トルネード”投法から繰り出すボールは綺麗にスピンがかかり、小気味いい音を立ててアウトコースに構えたミットへと吸い込まれた。
「足を上げた瞬間には、すでにボールの軌跡のイメージがしっかりできていました。でも2年生のときの方が力感もなく、スピードも140中盤、145kmくらいがマックスだったんですけど、130km台のボールでも平気で空振りが取れていましたね」
島袋は勝負どころを察知すると、一段階ギアを上げて自信満々にストレートを投げ込み、悠然と空振りを奪っていた。その象徴的なシーンが、2年生で迎えた2009年夏の甲子園での今宮との対決だ。さらに同年夏の沖縄県大会決勝戦、対中部商の3回裏にも、よく似た場面があった。