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「強いところと全部やれる。最高に楽しい組み合わせ」戦うごとに強くなる明治ラグビー、大学選手権決勝で早稲田へのリベンジなるか
posted2024/12/17 11:00
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Kiichi Matsumoto
12月1日、記念すべき100回目の早明戦には早稲田大学が勝利した。しかし、敗れた明治大学の戦いぶりもまた見事だった。「もう一度、この対戦を見たいね」。国立競技場のあちこちで、そんな会話が聞かれた。
そして12月14日、秩父宮ラグビー場。明大は次のターゲット、大学選手権優勝に向けて一歩目を踏み出した。
今季の大学選手権では、関東大学対抗戦1位の早大と2位の帝京大、リーグ戦1位の大東文化大、関西Aリーグ1位の天理大がシードされ、準々決勝から登場する。だが対抗戦で早大と帝京大に敗れて3位となった明大は、ライバル校よりも1週早く「負けたら終わり」の戦いに突入したのだ。
この試合に明大はタフな状況で臨むことになった。主将のNo.8木戸大士郎、副将のCTB秋濱悠太、寮長のLO佐藤大地という4年生のリーダー3人が、早明戦での脳震盪により揃って欠場を強いられたのだ。しかも相手は東海大学。今季は3位に沈んだとはいえ、昨季までリーグ戦6連覇を果たした強敵だ。
先制点は東海大だった。前半15分、自陣深くのPKから南アフリカ出身のFBセブンスターが逆風を突いて好タッチキックを蹴り、そこからのアタックでSH山田莞大が巧みなパスダミーで明大ゴールラインを陥れた。
しかし、明大は逞しかった。7分後の22分、本来はSOながら秋濱の欠場によりCTBで先発した伊藤龍之介が、稲妻のステップで東海大ディフェンスの隙間を切り裂いてトライ。CTB平翔太のコンバージョンで7−7の同点に追いつく。
そして30分。FB金昴平の蹴ったハイパントを、1年生WTB白井瑛人が相手選手を飛び越えながらスーパーキャッチ。そこから、木戸に代わって先発したNo.8藤井達哉、佐藤に代わって先発したLO物部耀大朗が相次いで突進。代役の2人がこじあけたスペースをSH柴田竜成が駆け抜け、14−7と明大が勝ち越す。
これで明大は乗った。33分に東海大がPGを返すも、明大は意に介さない。36分、伊藤のカウンターアタックで相手陣に攻め込むと、1年生SO萩井耀司のハイパントを追った白井が再び相手を飛び越えるスーパーキャッチをみせてそのまま前進。FB金昂平のトライにつなげ、前半を21−10で終えた。
早明戦の敗戦が促した成長
後半、風下に回った明大は前半以上に躍動する。主役は前半からスーパーキャッチを魅せ続けた1年生WTB白井だった。
後半早々の4分には右サイドでパスを受けトライ。13分には相手の蹴ったハイパントを高く跳んでまたもスーパーキャッチ。ここでは着地後に相手にボールを奪われたが、その5分後には味方SH柴田の蹴り上げたハイパントを追って、またもや相手を飛び越えるスーパーキャッチ。ここから攻め込んだ明大はフェイズを重ね、CTB平がインゴールへ。平がコンバージョンも決めて33−10とリードを広げ、明大が事実上勝負を決めた。
ここまで明大が挙げたトライは5。うち3本は白井のスーパーキャッチが起点となり、残り2本のうち1本は白井自身がボールを置いた。大学選手権では表彰がないが、対抗戦のようにプレーヤー・オブ・ザ・マッチがあれば、間違いなく白井が選出されたはずだ。50−17のスコアで試合が終わると、メディアは当然のように白井を囲んだ。