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「強いところと全部やれる。最高に楽しい組み合わせ」戦うごとに強くなる明治ラグビー、大学選手権決勝で早稲田へのリベンジなるか 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/12/17 11:00

「強いところと全部やれる。最高に楽しい組み合わせ」戦うごとに強くなる明治ラグビー、大学選手権決勝で早稲田へのリベンジなるか<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

後半4分に自らトライを挙げた白井。1年生ながらまさに八面六臂の活躍だった

「リーダーがいないという苦しい中での試合だったけど、楽しもうと思って試合に臨みました」

 1年生とは思えない言葉で試合を振り返った白井に、再三みせたスーパーキャッチについて聞く。白井は「早明戦でヨシタカくんとハイボールを競って負けたのが悔しくて、この2週間はめちゃめちゃ練習しました」と、笑顔で答えた。

「ヨシタカくん」とは桐蔭学園時代の1年先輩にあたる、早大の日本代表FB矢崎由高だ。白井が言ったのは早明戦の後半25分、矢崎が蹴ったハイパントを自ら追ってきた場面だ。落下点は明大陣22m付近、相手に捕られたら大ピンチだ。右WTBの位置で白井が助走をつけ、捕球しようと跳び上がる。だがそこへ、白井よりも高く跳んできたのが相手FB矢崎だった。

「結果は向こうのノックオンになったけど、ハイボールの競り合いでは僕がほぼ負けていた。ヨシタカくんはボールの落下地点に自分の最高到達点を合わせて跳んでいたんです。それが悔しくて」

 白井は早明戦が終わって2週間、全体の練習が終わってからの個人練習でSHの選手に蹴ってもらい、「納得できるキャッチができるまで」ジャンピングキャッチをひたすら反復した。それも、味方のキックを追う形と相手キックを迎えるケースの両方を毎日数十本。

「落ちてくるボールに向かって跳んで、最高到達点で捕ることを心がけました」

 その成果が東海大戦のスーパーキャッチ連発だったのだ。

「すごかったですね。驚きました」

 明大の神鳥裕之監督は、そんな言葉で白井のスーパーキャッチを称賛した。

「当然、日頃から練習している姿を見ています。もともとの能力だけでできるプレーじゃないことは見ていて分かる。日々の努力の積み重ねを大舞台で発揮できる彼の力は素晴らしかったと思います」

大学選手権決勝での再戦を目指して

 早明戦には敗れた明大だが、そこで得た学びは勝利よりも貴重だったかもしれない。それは、その結果得ることになったタフな日程も同じだ。 

 東海大に勝ったあと、先制トライを挙げた2年生のCTB伊藤龍之介は言った。

「1試合多くできるし、1試合分多く成長できる。それに、4年生とも1試合多く一緒に試合ができる。日程はキツいけど、ここから勝っていったらカッコイイでしょ」

 POM級の活躍を魅せた1年生WTB白井もポジティブに受け止めていた。

「夏合宿で負けた天理と、対抗戦で負けた帝京と早稲田、全部に勝てば優勝できる。今日戦った東海も強かったし、強いところと全部やれる。最高に楽しい組み合わせです」

 温故知新。福田健太主将(現・東京サンゴリアス)のもと優勝を飾った2018年度も早明戦で敗れて対抗戦3位となり、大学選手権ではライバルよりも1試合多く戦い、タフな試合から成長して頂点を掴んだ。

 神鳥監督は「次からは、順調ならキャプテンたちも戻れる見込みです」と明かした。

 早明戦で学び、敗れたとはいえ自信を掴み、早明戦でのアクシデントによるリーダーの欠場がチームをさらに鍛えた。そうして厚みを増したチームに、頼もしいリーダーが帰ってくる。

 ライバルとの対決を糧に、明大はまた強くなった。早大との再戦があるとすれば、それは大学選手権決勝である。

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