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永瀬拓矢32歳、70分超の電話取材で本音を思わず口に…「藤井(聡太)さんを人間として見てはいけないんです」「これが最後かもしれませんよ」―2024下半期読まれた記事
text by
大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2024/12/30 06:01
王座戦第2局終局直後の一コマ。藤井聡太七冠との感想戦で表情を崩す永瀬拓矢九段
「あ、おやつに注文したシャインマスカットエクレールを昼食と一緒に持ってきてもらったのはなぜですか?」
永瀬は「あー」と言ってから、おかしそうに話し始めた。
「コロナの時に、タイトル戦のおやつは対局室ではなくて控室で食べることになったでしょう。でも控室に戻るために時間を使うのは合理的じゃない。それなら昼食時におやつも食べてしまったほうが二度手間にならずに済むというのが理由です。ハハハ」
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緊張の後の緩和。もう、シリアスな話には戻れない。話を始めてから70分が過ぎており、さすがに潮時だ。取材が終わることを察したのか、最後に永瀬はこう言った。
「すべてを出し切るつもりで毎日を生きるしかありません。自分は価値のある存在にならなくてはいけないので、そのことを証明するために成し遂げたいことがあるんです」
藤井聡太からタイトルを獲る。そのためには
藤井聡太からタイトルを獲る——。
誰もがわかりきっていることだが、あえて文章にした。これから永瀬は多くを語らないかもしれないからだ。そうなると今後、永瀬拓矢という棋士を知るためには、棋譜を凝視するという根源的な作業に今以上に真剣に取り組まなくてはいけない。
棋譜にはその棋士のすべてが立ち現れているのだから。〈第1回からつづく〉