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「おおおぉぉぉ」ラグビー早明戦、なぜ名勝負が生まれるのか? 第100回を終えて考える“赤黒”と“紫紺”の歴史「解説席の五郎丸も田村優も…」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/12/08 17:00
40554人の大観衆が詰めかけた国立競技場。記念すべき100回目の大学ラグビー早明戦は、早稲田に軍配が上がった
今季の早稲田にも合理の香りが漂う。昨季の大学選手権で京都産業大学相手に完膚なきまでに叩きのめされたFWは(この敗戦を大阪で目撃した私は大きなショックを受けた)、この1年で見違えるほど逞しくなった。コーチ陣の丹念な指導、そして激しいブレイクダウンには学生たちの熱が感じられる。
そして、様々なキックを蹴り分けられる1年生、服部亮太の加入も戦術に大きな影響を与えている。
大田尾竜彦監督は、「亮太のキックに注目が集まるかもしれませんけど、チームとしては夏合宿からキックチェイスを組織的にできるように練習してきました。それがいい方向に出ていると思います」と話している。
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服部という存在が、早稲田の歴史を動かそうとしている。これも合理的選択の結果である。
「明治」のDNAとは?
一方、明治とはなにか。
メモリアルブックに、やはりヒントがある。2018年度、明治を大学選手権優勝に導いた田中澄憲が、清宮との対談でこう話している(聞き手は同じく藤島さん)。
「やはり明治はスクラムとモール。そこはフォーカスしました」
――らしさはスクラムで。
「加えて、それだけでは勝てないのでラグビーというゲームとしてどうあるべきかを指導する。(中略)ただ実際にあったんですけど、早明戦(2018年)でPGを狙わずにスクラムを選択して反対にペナルティーを取られて、モメンタムが向こうに流れて負けた。この失敗は明治らしくていいと。次はスクラムを選んで押し切れる強さを身につけなければいけないという話ができる」
100年の歴史が重なっても、明治の芯はスクラムとモールにある。
こだわり。しかし、そこさえ抑えれば表現の幅は広がる。
その源泉をたどっていくと、やはり北島忠治につながる。