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野球クロスロードBACK NUMBER
「必要以上に劣等感を抱いてしまって…」甲子園で“全国制覇→準優勝”の名門が秋大会敗退で「3季続けて全国不出場」の異例…監督が語ったホンネは?
posted2024/12/02 06:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
秋の大会へ向かう道程は間違っていなかったと、須江航は思っている。
今年の夏。仙台育英は宮城大会の決勝で敗れた。チームを率いる須江はいつも、試合に負けると敗因を徹底検証する。
ベンチ入りメンバーの人選。試合で起用した選手や交代のタイミングといった根本的な要素からスキルやフィジカルの習熟度を数値化、公式戦に臨むまでの練習への取り組みに競争意識、個々の時間の管理や道具の整理、グラウンド整備……。これらを細部に至るまでチェック項目を設けて選手へのヒアリングを重ねる。「どこに隙があったのか?」と掘り下げ、次への勝利へと繋げてきた。
一昨年の全国制覇→昨年の準優勝を「一旦、封印」
新チームの始動にあたって、須江がチームに号令を掛ける。
「本当のゼロからスタートしようよ」
これは2022年夏の全国制覇、翌23年夏の甲子園準優勝の栄冠を一旦、封印することにもなるのだが、変革はすぐには訪れない。
「今までだってこれで勝ってきたんだから、そこまで厳しくやらなくても別によくない?」
日本一となった先輩を知る選手のなかには、懐疑的で二の足を踏む者も当然いた。
「そういう意識だから勝てないんですよ!」
涙ながらに声を荒げる1年生ショートの今野琉成のように、次第に骨のある選手も増えていく。監督が「思考力と言語力に長け、背中で取り組みを見せられる秀逸なリーダータイプ」と評価する、下級生時代から主力であるキャプテンの佐々木義恭と副キャプテンの土屋璃空が、まとまり切れないチームを束ねていく。
これまでの「それぞれ課題に向き合いながら練習する」といった慣例以上に、理屈抜きで量をこなすことにも注力するなど、新たなメンタリティを熟成していった。