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「オオタニは最初、チームの平均値以下だった。でも…」エンゼルス元コーチが振り返る「ジャンプ力測定での出来事」 来季以降も“MVPが期待”できるワケ
text by
谷口輝世子Kiyoko Taniguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/13 06:00
3度目のMVPが確実視されるドジャースの大谷翔平。ハイレベルな成績を残し続けられるウラには、当人の気質と近年のデータ野球の影響が…?
エンゼルスで2017年から2021年1月までパフォーマンス統合コーチをしていたライアン・クロティンにオンラインで話を聞いたとき、クロティンは大谷の活躍の理由を「全てにおいて、オオタニがとても負けず嫌いであること」とした。
そして、それを表すエピソードを紹介してくれた。エンゼルスが大谷と契約したのは2017年12月。エンゼルスは、大谷との契約前にいくつかテストをし、ジャンプ力も測定した。
このときの大谷のジャンプ力の数値は「チームの平均値以下」だったそうだ。しかし、大谷はどの程度がベストの数値と見なされるのかを知りたがった。チーム合流時に再び測定したところ、1度目に測定したものよりも5インチ(約12.7センチ)も伸ばしてきた。
その後、チームからの提案によって筋肉のパワーアップ発揮を増大させる効果があるとされるプライオメトリックトレーニングを取り入れたところ、さらに3インチ(約7.6センチ)伸ばし、チームの上位2%以内に入ったというのだ。
さまざまなデータをとってもらい、その数値の意味を理解し、負けず嫌いを発揮して、貪欲に上を目指す大谷の姿が浮かび上がってくる。
30歳になった大谷翔平だが…いまだ「天井はない」?
先に紹介した本の最終章のタイトルは「天井はない」であり、「MLB選手は質の向上が止まっていなかったばかりか、史上最も急激に向上していたのだ。天井はあるにせよ、それまでにはまだまだ上昇の余地がありそうだ」と書かれている。
さて、これまでMVPに4回以上選ばれた経験があるのは、“ステロイド時代”のスーパースター、バリー・ボンズ(7回)だけだ。
球界全体のレベルアップそのものにもまだまだ上昇の余地があるとすれば、テクノロジーとデータ時代の恩恵で、30歳の大谷にも十分のびしろがあるのだろう。MVP7回のボンズには、いまだステロイドの影がつきまとう。少し気は早いのかもしれないが、テクノロジーとデータの時代にプレーする大谷の、その数字に近づく4度目のMVPにも期待したくなる。