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陸上女子トラック「最古の日本記録」はなぜ16年も破られない?…400mで“歴代10傑独占”「ロングスプリント界の至宝」千葉麻美とは何者だったのか
posted2024/11/07 11:00
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
AFLO
陸上競技では近年、用具の進化もあり「不滅」と言われた記録も次々に更新されている。そんな中で、今なお燦然と輝く記録もある。その1つが女子400mの日本記録だ。2008年に千葉麻美(旧姓・丹野)が樹立した51秒75は、16年もの月日が流れたいまも破られず、女子トラック主要種目においては最古の日本記録となっている。なぜ千葉は、日本の歴代パフォーマンス10傑全てを占めるほどの傑出度を誇るまでになったのだろうか?《全3回の1回目/つづきを読む》
「中学では100mをずっとやっていたんですけど、スタートが遅くて。距離が足りないんですよね」
8年前に陸上競技を引退し、今年39歳になった千葉麻美の雰囲気は、実に柔らかい。今も残る「不滅」の日本記録保持者であるロングスプリンターだったとは、一見すると分からない。
日本女子のロングスプリント界の歴史において、千葉の存在は傑出している。
女子400mで16年残る日本記録保持者であることはもちろん、日本歴代パフォーマンス10傑の全てを、未だ千葉の記録が占めている。
日本ロングスプリント界の「至宝」誕生の経緯は?
中学時代に千葉は100mでジュニアオリンピック3位に入っている。しかし、専門種目として100mを続けるには、どこかしっくりこなかったという。全日本中学校選手権の実施種目に女子400mはないので、必然的に女子選手が400mを始めるのは高校からになる。だが、千葉自身も当時の指導者も早い段階で400mが最適種目だと考えていた。
「自分でも距離を伸ばしたほうがいいなと思っていました。でも、800mだと長すぎる。顧問の先生からは『400mなら絶対にいい記録が出るよ』と言われていました」
千葉のロングスプリンターとしての才能は郡山東高に進学すると、すぐさま開花。2001年、高校1年時の国体(少年B=中3、高1世代)では3位入賞を果たした。
「始めたばかりだったので、走るたびに1秒ずつぐらい速くなっていきました。100mだと0.1秒更新するのもなかなか難しい。400mはやっていてすごく楽しいなと思いました」