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「オオタニは最初、チームの平均値以下だった。でも…」エンゼルス元コーチが振り返る「ジャンプ力測定での出来事」 来季以降も“MVPが期待”できるワケ
text by
谷口輝世子Kiyoko Taniguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/13 06:00
3度目のMVPが確実視されるドジャースの大谷翔平。ハイレベルな成績を残し続けられるウラには、当人の気質と近年のデータ野球の影響が…?
ベッツは例外だが、そのほかの選手は目立たない成績で、生存競争の激しいメジャーリーグで崖っぷちに立たされていた選手もいる。その彼らがテクノロジーとデータを活用し、これまでメジャーでは当たり前とされていなかったフォーム改造などに取り組むことで、MVP投票で票が入る選手になったり、サイ・ヤング賞候補になったりする姿を描いている。
つまり、メジャーリーグのなかで抜きんでた身体能力を持っていなくても、20代半ばを過ぎても目立った成績を上げられなかった選手でも、データをうまく使い、常識にとらわれず、理にかなったフォームに変えることによって『化ける』可能性を見せつけたといえる。
メジャーリーグがひとつのアクションごとの数値を本格的に公開するようになったのは2015年だ。今、わたしたちが見ている大谷翔平の全盛期は、スポーツとテクノロジー、データの時代と重なる。
平均的な選手でもリーグトップ級に化けるが、もともとトップクラスの選手はさらによくなる。
もともとの身体能力が高く、集まってきたデータをうまく活用できるスタッフと、自分自身の研究熱心さを持ち合わせた選手が、こういった情報とテクノロジーを活用すればどうなるか。その答えのひとつを大谷は体現しているのではないか。
二刀流の大谷を“指導”なんてできない。しかし…
筆者は2022年にドライブラインを取材した。
建物自体は殺風景な大きな倉庫のようだが、壁にはこの施設を利用しているメジャーリーガーのユニフォームが飾られていて、そこには大谷のものもあった。施設内を案内してくれた人は、このような話をしてくれた。
投打の二刀流で、さらにメジャー史上に残る活躍をしている大谷を、選手としては何の実績もない人が“指導”するなんてことはできないとし、しかし「データがどのようにすればよいのかを教えてくれるのだ」と続けた。
もちろん、テクノロジーとそれによるデータが最適解を示しても、そこに近づくように身体を動かさなければいけない。大谷は負けず嫌いでハードワーカーだ。