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2023年ドラフト“1年後検証”…ドラ1が「注文通りの活躍」の巨人と楽天、DeNAは下位指名選手から有望株が?《巨人・楽天・DeNA・ソフトバンク編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/08 17:02
シーズン序盤は中継ぎ、以降は先発として活躍した巨人の西舘勇陽(中央大)。1位指名が活躍すると翌年のドラフトも好循環が生まれる
ソフトバンクは1位・前田悠伍の成長が光
【ソフトバンク 2023年ドラフト指名選手】
✕武内夏暉 22歳 投手 國學院大 185cm90kg 左投左打
1位 前田悠伍 18歳 投手 大阪桐蔭高 179cm76kg 左投左打
2位 岩井俊介 22歳 投手 名城大 182cm90kg 右投右打
3位 廣瀬隆太 22歳 内野手 慶應義塾大 182cm92kg 右投右打
4位 村田賢一 22歳 投手 明治大 179cm92kg 右投右打
5位 澤柳亮太郎 23歳 投手 ロキテクノ富山 178cm88kg 右投右打
6位 大山凌 21歳 投手 東日本国際大 179cm77kg 右投右打
7位 藤田悠太郎 18歳 捕手 福岡大大濠高 170cm75kg 右投右打
【ソフトバンク 総評】
最重要補強ポイントの「左腕投手」を、前田悠伍(大阪桐蔭高)で抑え、武内夏暉(投手・國學院大)を逸したのは、今季の西武での活躍を見れば、歯ぎしり千万の思いだろうが、そこは「王者」だ。「やっぱりね、ウチの見立てに間違いはなかったね」と余裕の姿勢だったのではないか。
理由は、繰り上げ1位・前田悠伍の大成長だ。
ファームで強化練習を重ねながら、ウエスタン12試合に、主に先発で登板。防御率1.94の盤石の投球内容で4勝1敗。65イニングで58奪三振も「あっぱれ!」だが、それ以上に四死球わずか8の精度の高さ。プロのストライクゾーンにもサッとなじんで、全く苦にしなかったピッチングセンスに、計り知れない将来性を感じてしまう。
2位指名から5人連続で「大学生・社会人」を指名。
どうしてもルーキーの力を借りなきゃならないほど、戦力がひっ迫しているチームじゃない。2、3年先を視野に入れながら、1年目もちょいと一軍戦力に加わってくれたらありがたい。そんな、チームの願いを、そのまま体現してくれたように見える。
2位・岩井俊介(投手・名城大)、5位・澤柳亮太郎(投手・ロキテクノ富山)、6位・大山凌(投手・東日本国際大)。いずれも、それぞれの個性を発揮しながら、中継ぎでチームの力となり、来季以降への足がかりを掴んだ。
ウエスタンの中継ぎ登板で、四球をほとんど出さずに三振を取りまくる投球で認められた岩井投手は、一軍で同様の投球(15試合13イニング・1勝1敗・10奪三振・2四球)で存在感を発揮。澤柳投手も、勝負球のカットボール、フォークを駆使して11試合の中継ぎで奮投。落差の大きなカーブとフォークを武器に緩急の投球で18試合に登板した大山投手。
残念ながら、澤柳投手はシーズン中にトミー・ジョン手術を受けることになったが、ソフトバンクの強力投手陣の層をさらに厚くできるピースが、今季、さらに増えたことを立証した。
3位・廣瀬隆太(内野手・慶應義塾大)も、ウエスタンの実戦でクリーンアップをつとめながら(94試合・打率.255・3本塁打、80安打23長打)、一軍でも35試合(打率.233・2本塁打)に出場。長打力もあるが、意外とあまり三振をしないバッティングで、柳町達外野手(5年目)、正木智也(3年目)に続く「塾・3人目」のバットマンとして、頭角を現しつつある。
おそらく、将来性を期待しての指名となったはずの7位・藤田悠太郎(捕手・福岡大大濠高)と育成指名の8選手が、今季の「音なし」だったのは仕方のないところ。一軍で使える確かな特徴を持った選手を獲得して、使いながら育てていく……その狙いは果たせた今季になったようだ。
【総合評価 〇】
<広島・ロッテ・阪神・オリックス編へつづく>