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「泣いている場合じゃないぞ」全日本駅伝、駒澤大が涙の16位→2位の超人的な大まくり…5連覇失敗は「敗北」か「収穫」か? “箱根ではやり返す”
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/11/05 11:00
最終区間、國學院大とトップを争っていた青学大をかわして2位フィニッシュした駒澤大の山川(3年)
レース後、篠原は桑田にこう声をかけた。
「自分の負けは自分でしっかり噛みしめ、この試合があって良かったと思えるように、しっかり次につなげていこう」
篠原に肩を抱かれた桑田は、目を潤ませていた。
2区終了時点で16位は、駒澤大にとっては想定外の位置だった。普通ならばズルズルと行きそうなところだが、ここから強烈に巻き返していく。
想定外から猛烈な巻き返し
反撃の口火を切ったのは、3区の伊藤蒼唯(3年)だった。
16位からのスタートだったが、8キロ手前で9位まで順位を押し上げるという猛烈な巻きを見せた。
「走る前からいろんな順位を想定していましたし、自分の設定タイムがあり、走るからには区間賞を獲りたいという気持ちもあったので、とにかく最初から突っ込んでいきました。5キロまでよく動いていましたし、いい感じで入れたのでそのまま行きました」
トラックシーズンでは思うように走れなかったが、夏合宿で篠原と一緒に練習をするようになり、ベースが上がった。出雲駅伝では伊藤自身としてはもう一つだったというが、そのレースが刺激になり、「今回うまくハマってくれた」という走りで最終的にシード圏内の8位まで順位を戻したのだ。
駒澤大にとっては、ここからが勝負だった。
ポイントは初駅伝の選手たち
「今回のレースは、4区、5区、6区に初めて駅伝を走る選手を置いていますが、ここでしっかり走ることができるかどうかが、優勝する上で最大のポイントになります」
決戦前夜、藤田監督は、そう述べていた。
順位は想定外だったが、伊藤の好走が後続の選手の気持ちを奮い立たせた。4区の谷中晴(1年)は、区間3位でチームをさらに5位に押し上げた。出雲駅伝と同日の記録会で13分49秒を出し、藤田監督に「次(全日本)は使う」と断言させた1年生が、デビュー戦で素晴らしい走りを見せた。
つづく5区の村上響(2年)も区間5位の走りで駅伝デビューを飾り、順位をキープ。トップの青学大との差は、2分32秒となった。
6区の安原海晴(2年)も兄・太陽が前回大会で区間賞を獲ったのと同じ区間で3位と好走し、見事な駅伝デビュー。5位をキープして7区の篠原に襷を渡した。