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「負けて悔しくないんか?」DeNAを“日本シリーズ王手”に導いた桑原将志の猛ゲキ…“全員一丸”を引っ張るガッツマンの「7年前の悔しさ」とは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/11/01 17:02
第3戦ではホームランを放つなど攻守でDeNAに勢いをもたらしている桑原
幼いときからなりたくて仕方のなかったプロ野球選手。桑原は、名門の福知山成美高に入学し、1年の春にサードのレギュラーを掴んだが、野球部員の不祥事により1年の夏、2年の春夏と大会に出場できない悔しさを味わっている。当時どんな心境だったのかを尋ねると、桑原は次のように答えた。
「本当にプロを目指して頑張りたいと思っていたので、やっぱり試合に出られなかったのは悔しいというか、歯がゆい気持ちは強くありました。ただもう練習しかできないんだったら、練習するしかない。1週間も経てば気持ちも切り替わりましたし、もう今やれることをやるしかないって」
こんなところでくじけている場合じゃない
今やれることをやる――。
常にベストを尽くすこと。この言葉は、桑原の人間性を表している。どんな逆境であっても、どんなに不遇であっても、今の自分になにができるのか、どう行動すればいいのか。紆余曲折の野球人生、プロになってからもこのマインドが大きな指針になっていると感じてならない。確実に怪我をしているとおぼしきとき、若手から「クワさん、大丈夫ですか?」と訊かれても「大丈夫じゃ!」と大きな声で笑顔を見せ、黙々と練習をこなしていく。
何がそこまでそうさせるのかと問うと、桑原は達観したように言うのだ。
「例えば悩んだとしても自分一人だけの問題じゃないんですよ。自分一人のためにどれだけの人が時間を費やしてくれたのかを考えると、本当に計り知れないので、やっぱり落ち込んではいられない。苦しくなったときは、自分を支えてくれた人たちの顔を思い出すんです。こんなところでくじけている場合じゃないって」
桑原は「自称“永遠の若手”です」といつも笑って言っているが、その根本には練り込まれた野球人としての核がある。だからこそこの大事な日本シリーズ、桑原の胆力が必要だったのだろう。
この数年来、DeNAはCSには進出するもなかなか勝ち上がれない状況がつづいていたが、桑原はそれについて次のように語っていた。