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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「昨年のドラフト1位3人がトミー・ジョン手術、うち1人は育成に」有望投手たちのヒジに今起きている“異常事態”…医師は「小学生に執刀したことも」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/26 17:00
即戦力と期待されて阪神に入団した23年ドラフト1位の下村海翔だったが…
現在、手術を受けるのはプロ野球選手ばかりではない。
小学生で手術を受ける場合さえある
「中学生、高校生も珍しくありません。小学生で手術を受けるケースは稀ではありますが、私が執刀したある小学生は、180cmを超えるほどの大きな体格でした。小学生の中にそんな選手がいたら、チームは勝利のためにその投手に依存する戦い方になりますよね。結局、小学生年代での投球過多が原因で、その少年は手術することになりました。大人とは違い、暦年齢(実年齢)に骨年齢が追いついていない子だと、よりリスクは大きい。大型の投手ともなればなおさらです。たとえば、高校時代の大谷翔平選手や佐々木朗希投手がそういうタイプだと思われます」
ドラフトで指名されるような大学生投手の多くは、入学から4年後の指名を見据えて努力を重ねる。前述のスカウトが続ける。
「2年生、3年生の時にたとえばヒジに痛みが出たとして、どんな対処をしたのか。ドラフトで指名されるために、あるいは他大学のライバルとの競争に勝つために、痛みを抱えながらドラフトイヤーを迎えたということも考えられるでしょう。反対に、今年のドラフトで注目されたある社会人の投手は、大学3年生の時に、手術を経験しています。彼の場合は、大学4年での登板を諦め、そこで手術に踏み切ることが、より長く野球界で活躍でき、自分の商品価値を高めることになると考えたわけです。たとえ、翌年のドラフトで指名されなくても、(社会人を経た)3年後の指名を目指そう、と」
プロで選手寿命を長くする方策とは
入団直後にケガが発覚することを回避し、結果として選手寿命を長くする方策として、スカウトが提案するのが診断書の提出だ。
「メジャーに倣って、ドラフトの前に公的な機関でメディカルチェックを受け、プロ志望届と一緒に診断書を提出することを義務づけるのです」
ドラフトを前に健康体であることを証明する必要があれば、ケガを隠して投げ続けることもできなくなり、ケアも怠らなくなる。診断書提出の義務化が投球障害の抑止力となり、球団からすれば入団直後にトミー・ジョン手術を受けるという不測の事態も回避できるのだ。
<後編につづく>