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あの「黄金世代」から5年…東海大まさかの落選 「留学生級」スーパーエース抜きの東農大は1秒差で涙…箱根駅伝“大波乱の予選会”はなぜ起きた?
posted2024/10/21 11:03
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Yuki Suenaga
まさに天国と地獄だ。
予選通過と落選を分けたのは、わずかに1秒。
順天堂大が“11時間01分25秒”の総合タイムで10位通過を決めた後、11位の東京農大のタイム“11時間01分26秒”がアナウンスされると、立川昭和記念公園内の原っぱが大きくどよめいた。
箱根駅伝の予選会はチームから最大12名が出場し、上位10名の合計タイムで競われる。上位10校までが本戦出場権を獲得するが、1秒は一人当たりに換算すれば半歩程度の差でしかない。
さすがにやりきれないのか、東農大の選手たちは溢れ出る涙を抑えることができなかった。
発表から5分が過ぎても、控えのテントからはすすり泣きが聞こえてくる。そんな中、気丈にもラジオインタビューを受けていたのが2年生の前田和摩だった。その終わり際に声をかける。
前回大会「日本人1位」のエース・前田の欠場
前田は東農大のエースだが、今回はコンディション不良により欠場。どんな思いで仲間の走りを見守っていたのだろう。
「みんなには僕の分まで頑張ってもらって……。なんで自分はこうなんだろうなって思います。ほんと申し訳なかったですね」
8月に体調を崩し、肺気胸を発症していた。小指徹監督と話し合い、早々に予選会は欠場することに決まったという。
だが今は、まったく走れない状態というわけではないようだ。もし自分が走っていればとの思いは、前田自身にもあるのだろう。
「あまり詳しく話すつもりはないんですけど、監督には無理をさせないということで判断していただきました。早い内に今年は無理をせずにってことになったので……。まあ、そうですね。もうみんなに託す、任すってかたちになりました」
前田は公園内の15kmと20km付近で仲間の走りを見守り、下馬評をくつがえして粘走する仲間たちに必死で声援を送った。前回は自身が日本人トップを奪って10年振り本戦出場の立て役者となったが、今回は個人46位と健闘した栗本航希(2年)を始め全員が持てる力を発揮した。
それでも、わずかに1秒及ばなかった。走れなかった悔しさは、そう簡単に晴れることはないだろう。ましてや、4年生にとっては今年が最後の箱根を走れるチャンスだったのだ。