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「ヤクルトが期待する左腕“2人の佐藤”」「“広島の至宝”宗山塁は地元カープがドラ1指名」ドラフト全指名予想《ヤクルト・楽天・広島編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/10/23 11:21
ドラフト目玉候補の西川史礁選手(青学大・182cm83kg)
来季17年目の34歳、鉄人・浅村栄斗にもさすがにかげりが見えてきた。顕著なのが、やはり長打力。昨季の26本塁打が、今季は14弾に。この西川史礁、龍谷大平安高ではショート、サードをこなしており、私は2年春のセンバツで柔軟な身のこなしの「西川遊撃手」を目撃している。
背中を叩く勢いの柔軟で強烈なスイングからの弾丸ホーマーに、追い込まれてからのシュアなセンター返し。打のバリエーションの広さが高い実戦力だ。
2位で村上泰斗(投手・神戸弘陵高)を指名した瞬間、いくつもの球団のテーブルから「声にならない声」が聞こえてきた。
昔はもっと反応がはっきりしていて面白かった。巨人・長嶋茂雄監督が、狙っていた選手をひと足お先に指名した球団のテーブルに向かって、笑いながらゲンコツを振り上げる。指揮官にそれぐらいの悔しさの反応がなくては、現場のスカウトたちは立つ瀬がないというものだ。
さて、村上投手だ。高校生でも、使おうと思えば1年目の後半からでも一軍で投げられる「完成度あり」と見る。
2400~2500回転ともいわれるホップ成分抜群の速球が常時145キロで、スライダー、ツーシーム、高速フォークの精度も高く、牽制、フィールディングにも欠点なし。突き抜けたセンスを持つ者は、より高いレベルに置くほど、より輝きを増す。ちょっと乱暴な表現で恐縮だが、こういう選手は使ってしまえばいいんだ!
今季の楽天、捕手も頑張ったと思う。太田光に叩き上げの豆ダンプ・石原彪は打撃成績はもう一つだったものの、10割近い守備率でチームのディフェンスを支え、安田悠馬はシーズン終盤、クリーンアップの一角としても奮戦。しかし、捕手というポジションはいつなんどき何が起こるかわからないし、安田選手はやはり「バットマン」だろう。
ならば、特に守備ワークで頼りになる捕手を……ということで、石伊雄太(捕手・日本生命)を3位指名。スローイング能力はアマチュアトップクラス。課題の打も、都市対抗の大舞台で繰り返しタイムリーが打てるまでに上昇中だ。
超大型右腕は「プロでしか育成できない」?
ここから3人が、将来性期待の高校生たち。例年の「楽天パターン」に入る。
プロ9年目にしてショートの定位置を奪い取った村林一輝選手、おめでとうございます。今だから言うわけじゃないが、夏の大阪・舞洲スタジアムで、たまたま見つけた野球センス抜群の右のオーバーハンド。大塚高校なんて聞いたことなかったが、バント処理のフィールディングを見て、野手にしたら面白いと思った。左中間突破を三塁打にした快足もキラキラに光っていた。
話が横道に逸れた。4位・石見颯真(遊撃手・愛工大名電高)はプロレベルで通用する、打てて守れるショートだ。ならば、どうして「4位」なのか。遊撃手になってまだ1年、昨夏までは外野手だったのが、印象として損をした。もともとは正真正銘の遊撃手。終始、頭とグラブの位置の低い、流れるようなフィールディングの持ち主だ。
5位・山口廉生(投手・仙台育英高)が193cm89kg、6位・小船翼(投手・知徳高)が196cm106kg。共に、今年の高校生投手トップクラスの「超」の付く大型右腕だ。こういうタイプはプロでしか育成できない。大学4年間では時間が足りないし、今の社会人は完全な「大卒社会」で開発途上の高卒超大型投手の成長を待ってくれる空気がない。