大型は時間がかかる。いや、時間をかけるのだ。ただ、この2人には「ボディバランスの良さ」という才能がある。上体だけで投げて145キロ前後のスピードが出て、フォーク、ツーシーム。変化球も投げられる野球上手たちだ。体作り、フォーム作りに2年、ファームの実戦で1年。4年目にメドをつけたい。

【広島東洋カープ　2024年ひとりドラフト指名選手】

1位　宗山塁　21歳　遊撃手　明治大　176cm76kg　右投左打
2位　狩生聖真　17歳　投手　佐伯鶴城高　180cm85kg　右投右打
3位　佐々木泰　21歳　三塁手　青山学院大　179cm80kg　右投右打
4位　渡邉悠斗　22歳　一塁手　富士大　181cm97kg　右投右打
5位　岡本駿　22歳　投手　甲南大　186cm83kg　右投左打
6位　寺本聖一　21歳　外野手　広島経済大　170cm85kg　右投左打

【広島　総評】

　9月の頭まで、セ・リーグの首位を堅持してきた広島東洋カープが、その後の1カ月でよもやの急降下。

　9月の成績が、あろうことか「5勝20敗・防御率4.29」。チーム力を考えたら、何事もなくリーグ優勝とは思わなかったが、それにしても……。いちばんショックだったのは、地元のファン以上に選手たち自身だったろう。

　凋落の9月（失礼！）は4点台に落ちたチーム防御率だが、それまでは2点台前半の驚異的な好成績。先発ローテーションも、リリーフ陣も、今季はよく頑張った。投手陣については人材も豊富に見える。

　課題は打線と誰もがそう言うが、今年はアマチュア球界に強力スラッガーがとても少ない。行き着くところ、西川史礁か宗山塁かの二者択一だろう。

　右打ちの長距離砲・西川史礁ならチームの実情にも合致し、ファンの要望にも応えられる人選だろうが、今年は宗山塁という「広島の宝」みたいな存在がいる。なんとも運命的なかち合いではないか。この2人、この先プロで何かと「かち合う2人」になりそうな気がする。

地元出身のスター候補…何をおいても獲得すべき！

　今年のカープ1位は、巨人との競合の末、宗山塁（遊撃手・明治大）に決した。

　彼が1年生の時から4年間、神宮球場や府中の明治大野球場のネット裏から、じっとその成長ぶりを見守ってきた苑田聡彦スカウト部顧問が、見事に「選択確定」のハンコのついた札を引き当てた。

　矢野雅哉がいるじゃないか、菊池涼介はどうするんだ。そういう問題じゃない。これだけの野球の才能と、スター性と、リーダーシップを兼備した逸材が、地元・広島から生み出されたら、何を置いても獲得するのが、「県民球団」を標榜して立ち上げたカープの使命ではないか。

　ショート、セカンドのポジションをめぐって、3人で競争すればよいのだ。それが、プロフェッショナルというものだろう。

　2位に大阪商業大・渡部聖弥を持ってきて、宗山との広陵コンビで打線を整備しようという「野望」は、2位指名の冒頭でついえた。西武に指名されて、カープは伸びしろ天井知らずの本格派投手・狩生聖真（佐伯鶴城高）に舵をきった。

　カープのエースグループの一員・森下暢仁を大分商業高当時に指導した渡辺正雄監督が、新たな任地で3年間、手塩にかけた本格派右腕だ。伸びやかな長い四肢をしならせて投げ下ろす快速球のバックスピンがすばらしい。今の薄い体にあと10kg筋肉量が増したら、アベレージで150キロ前後が見込める。プロ球界有数の快腕にのし上がった偉大な先輩には失礼だが、高校時の比較なら、狩生投手の球威が一枚上と見ている。

【次ページ】　広島5位指名は2024ドラフト「最大の隠し玉」