草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
〈大谷vsダルが実現〉19年前の“日本人対決第1号”投手が語るプレーオフのリアル「シャンパンファイトでエースが怪我」「分配金の配分は…」
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/06 06:01
大谷vsダルビッシュの日本人対決に熱い視線が注がれる
当時のカージナルスは、アルバート・プホルスのチームだった。シーズン100勝62敗という圧倒的な強さで中地区を制覇。対するパドレスはこの2年後にサイ・ヤング賞に輝くエース右腕、ジェイク・ピービーがチームの中心だったが、ポストシーズンの開戦前から深刻な不安を抱えていたという。
隠し通したエースの怪我
「地区優勝の時のシャンパンファイトで、ピービーが割れた瓶の破片で足の裏を切ってしまったんです。カージナルス相手にこれは不利だなという思いはありました」
アクシデントを隠し、何とか第1戦に先発したエースだったが、無残に打ち込まれた。一方で大塚自身のコンディションも万全にはほど遠かったという。
「少し守備に不安があったので、2日ほど前の練習でバント処理をやったんです。その時にぎっくり腰になってしまい、腰の痛みとの戦いと自分へのふがいなさがありました。そんな中で全てビハインドの状況での登板だったんですが、プホルスと対戦したことは覚えています。セントルイスでプホルスに打たれたら、もう球場全体がイケイケになる。そこは必死でしたね」
分配金の分け前は…
第1戦で対戦した主砲には味方の失策で塁には出したが、勢いはつけさせなかった。MLBで通算39セーブ、74ホールドを挙げた大塚だが、ポストシーズンの体験はこの年だけ。まさしく「あっという間の」3試合だった。
「よく覚えているのは分配金の配分ですね。他の球団は知りませんが、あの年のパドレスは選手たちで決めました。フルシーズンメジャーにいた選手、半分の選手、トレードで途中から加わった選手……。選手だけじゃなく、スタッフも扱いは同じでした」
日本とは総額からして桁違いだろうが、通常ならば現場は監督といえどもせいぜい意見を添える程度で分配には関与せず、球団管理となっているはずだ。そこを選手とスタッフの隔てなく、どれくらいの期間、メジャーにいたかで取り分を決めた。
ぶら下げられた“ニンジン”
リーグ優勝、ワールドシリーズと勝ち上がっていたら、額はどんどん変わっただろうが配分は変わらない。そのシステムは日本球界からやってきて2年目の大塚にはすごく新鮮に映り、チームの士気は大いに高まったという。