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「2年連続ホームラン王」大谷翔平54発はパワー、打球速度だけでなく「技術・知性の結晶」“テレビが報じない”キャリアハイの決定的要因
posted2024/10/05 17:30
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
史上初の50-50を達成した大谷翔平。盗塁は稿を別に譲るとして、大谷は今季、本塁打を打つ「力」、そして「技術」「攻略のインテリジェンス」も進化していた。
最高速の打球速度、最大飛距離ともトップクラス
まずはMLB公式サイトに表示されている「STATCAST」から、大谷の打球速度、飛距離の推移を見ていこう。以下は各シーズン最高速の打球速度(km/h)と、最大飛距離のMLB打者での順位の推移。
2018年:183.3km=43位、136.9m=43位
2019年:185.2km=37位、136.3m=90位
2020年:180.1km=63位、133.9m=96位
2021年:191.5km=3位、143.4m=10位
2022年:191.7km=3位、140.9m=19位
2023年:190.9km=4位、150.4m=1位
2024年:191.8km=3位、145.2m=4位
入団1年目、当時24歳の大谷の打球最高速は183.3km/h、NPBのレベルでこれだけの打球速度を出せる打者はほとんどいないが、MLBでは43位。スタットキャストの規定打数以上の選手は250人前後だから、それでもかなり上位とはいえ、2020年まではトップクラスではなかった。
この時期、アジア出身で打球速度が一番速かったのは、先日、大谷にアジア出身選手通算最多本塁打の座を明け渡した、韓国出身の秋信守(今季まで韓国プロ野球でプレーし、引退)だった。
しかし大谷は2020年オフに先進の機器をそろえたトレーニング施設「ドライブライン」を訪れて自らの打撃技術を分析し、新たなトレーニングを開始してから、打球速度と飛距離が格段に伸びた。
2021年以降はヤンキースのアーロン・ジャッジ、ジャンカルロ・スタントンらとともに「MLBトップクラス」の数字を残すようになる。
最速190km/hの打球は、日本ではほとんど見られない。2023年3月の第5回WBCで大谷の打撃練習をケージの後ろで見ていたヤクルトの村上宗隆が、その打球速度を知って顔色を失ったのは有名な話だが――この時期から大谷翔平はMLBでもめったにいないバットスピードの選手になっていた。
「本塁打を打つ技術」でもジャッジと双璧
そして今年は、打球速度で自己最速を更新した。
彼の上には、パイレーツのオニール・クルーズ、ヤンキースのジャンカルロ・スタントンがいるだけ。クルーズは、身体能力ではトップクラスながらそれを活かしきれていない若手だ。なお今季58本塁打のヤンキース、アーロン・ジャッジは189.1km/hで6位だった。
大谷は打球速度が速いだけではない。