酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「気温ほぼ30度以下」高校球児の夏は甲子園だけでなく…「元プロが助っ人」「参加費27万円は自己負担だが」北海道とエスコン開催イベントに密着
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJBI
posted2024/09/09 06:00
「LIGA Summer Camp」の集合写真。エスコンフィールドHOKKAIDOが甲子園とまたひと味違う“聖地”になる日も来るのかもしれない
多くの高校生は「夏の甲子園」の実質的な予選である地方大会を終えれば、大学、社会人で野球を続けるにしても高校での野球にピリオドを打ってしまう。しかし、野球に対する諦めきれない思いをぶつける場、野球の楽しさを存分に味わう場があっても良い、それが選手の成長や、未来につながる。その思いで企画されたものだ。
1人約27万円という参加費を自己負担することになるから、誰でも気軽にというわけにはいかない。
とはいえ企画段階から阪長氏の取り組みを見てきたが、本当にこんなイベントが実現するのか、という思いもあった。しかし、第1回は想像以上に充実したものになった。選手が心の底から野球を楽しんでいたのは、彼らの表情を見ればわかる。そして、野球のレベルも高かった。運営も概ねスムーズだった。
“商業主義はそぐわない”の声があるのは事実だが
その背景には、阪長氏がしっかりした「コンセプト」を立てたことがあると思う。
阪長氏は「3年間真剣に野球に取り組んだ選手に来てほしい」と言った。強い弱いは別として、野球に真摯に向き合う選手が揃ったことで、リーグ戦は好ゲームが多かったし、ベンチの空気は和気あいあいとして良好で、チームをまたいだ交流もあった。大きなケガ、故障がなかったのも、選手の実力差が少なかったからでもあろう。
Liga参加校の監督や荻野氏、大引氏などLigaの理念をよく知る「大人」がしっかりわきを固めたのも良かったと思う。さらに、旅行代理店出身の阪長氏らしく、全体のアテンドを株式会社日本旅行北海道にゆだねたのも正しい選択だっただろう。
阪長氏は選手だけでなく、運営をサポートするボランティアスタッフも全国から募った。
率直に言って、小さくない金額を高校生側が負担するこのイベントは「すべての高校生に体験してほしい」といえるものではない。「商業主義は高校野球の精神にそぐわない」という声が聞こえたのも事実である。
しかし阪長氏のこの試みは、100年以上も大きな変化なく続いてきた日本の高校野球、アマチュア野球の在り方に一石を投じるものではあろう。
1年前、何の伝手もなかったんですけど
今ではさらに多額の費用を投じて、野球留学をする高校生もいる。高校生の野球への向き合い方はもっと多様で、いろんな可能性があってよいのだと思う。
エスコンフィールドでの試合が終わって、阪長氏はマウンドで選手たちに胴上げされた。
「1年前にここに来たときは誰も知らず、何の伝手もなかったんですね。でもいろんな人と出会って、奇跡的な出会いもあって、いろいろな人にも助けられて、このキャンプができました。本当に皆さんのおかげです」
来年以降のサマーキャンプにも注目していきたい。