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「練習は毎日2時間半」「スポ薦ナシ」の“偏差値65”進学校が、全国準優勝の関東一を崖っぷちまで追い詰めたナゼ「野球への異常な愛が…」

posted2024/08/31 11:04

 
「練習は毎日2時間半」「スポ薦ナシ」の“偏差値65”進学校が、全国準優勝の関東一を崖っぷちまで追い詰めたナゼ「野球への異常な愛が…」<Number Web> photograph by (L)Nanae Suzuki、(R)Asahi Shimbun

芝を率いた増田宣男監督(左)と主将の久米崇允選手。久米たち今年の3年生には「野球への異常な愛情があった」と指揮官は振り返る

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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(L)Nanae Suzuki、(R)Asahi Shimbun

 京都国際の初優勝で幕を閉じた今夏の甲子園。決勝戦でその京都国際と大熱戦を繰り広げたのが東東京代表の関東一だった。実は同校、夏の初戦となった東東京大会3回戦で、8回までリードを許し、タイブレークまで縺れ込む辛勝を経験している。すわ「世紀の番狂わせ」か――と強豪を追い込んだのは、都内では野球よりも進学校として名高い芝高校。関係者を驚かせた大接戦のウラには、一体何があったのだろうか?《NumberWebノンフィクション全3回の3回目/最初から読む》

 好試合が演出されるには、いくつかの条件が重なる。

 関東一にとって、これが夏の初戦だったこと。そして重要なのは、芝が番狂わせを演じるポテンシャルを持っていたことだった。

 今年の芝を分析し、その「エッセンス」をかみ砕いていけば、公立校や進学実績を重んじる学校にも、甲子園の出場は難しいとしても、番狂わせを起こすチャンスがあるのではないか? 

 増田宣男監督に、芝の部活の状況を訊いてみる。

「芝は中高一貫の男子校で、一学年は300人程度です。中学に軟式と硬式のリトルシニア、高校にも同様に軟式と硬式野球部があります。今年の3年生は10名で、3学年で30名ほどです。

 中学に硬式があるのは珍しいですが、ウチの場合、青森山田中学のように強化の一環というわけではなく、中体連には硬式野球の公式戦はありませんから、生徒たちの活動の場を広げるためにリトルシニアに加盟したという経緯があり、今年で30年になります」

部活動は週5日。普段も練習は17時30分まで2時間

 中高で4つの野球部があるというのは珍しいが、そういう事情があった。取材当日は、校庭の半分を使って守備、走塁練習が行われていたが、校庭のもう半分は芝中学のリトルシニアの生徒たちがテニスボールを使って打撃練習をしていた。

「グラウンドの兼ね合いもありまして、部活動は週5日、月曜と木曜は休みです。普段の日も練習は17時30分までの2時間で、18時には完全下校となります」

 条件は良くない。ただ、今年の3年生には「野球に対する異常な愛情」があったという。

「3年生は、野球がとても好きなんです。たぶん、勉強よりも野球が好きなんじゃないかと(笑)。特に打撃に対する執着には尋常ではないものがありました。いろいろな動画を見たり、研究をしていたと思います」

【次ページ】 3年生が持っていた「打撃に対する異常な愛」

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