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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「タイブレークに“必然”を感じたことは一度もない」甲子園決勝でもタイブレーク制は必要? 監督たちが語る本音は…「場面設定も公平ではない」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/25 17:01
関東一のラストバッターとなった2年生の坂本慎太郎。互角の勝負でも勝者と敗者が分かれる現システムを、現場の指導者はどう感じたのか
こんなふうに考えるようになった経緯……そこは、ご自身の体験が、ベースになっているという。
「高校生活のすべてと引き換えにして、<甲子園>を目指す。さんざん苦労して、たいへんな思いして、県大会を勝ち抜いて、やっとこさっとこで、甲子園に出場した。ところがやっと出られたと思ったら、1回戦で強い相手にボコボコにされて、気がついたら控え室で、みんなでワーワー泣いていました。
なんだ、オレの<甲子園>って、こんなことかと。オレの甲子園は号泣だけか、泣いたことしか覚えてない。「勝者」だと思って出て行った甲子園なのに、完全な「敗者」になって……。生徒たちをそんな目に遭わせる必要があるんですかね」
「タイブレークなんて、<運>ですから」
もっとはっきりと言いきってくださったのは、ご自身には「甲子園実戦経験」のない別の監督さんだった。
「タイブレークなんて、<運>ですから」
驚くほど、決然としたもの言い。よほど、思うところがあるようだ。
「僕も何度かタイブレークを経験していますけど、たまたま、打球が抜けてくれたから、たまたまあそこで相手のキャッチャーがパスボールしてくれたから……勝った時も、負けた時も、タイブレークに<必然>を感じたことは一度もないですね」
必ずしも、公平な「場面設定」ではないという。