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「やってもーたー!全国に恥を…」京都国際の主将が決勝後の控え室で…“テレビに映らない”姿を記者が目撃「選手が明かした校歌のこと」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/25 11:03
今夏の甲子園を制した京都国際ナイン
「辛かった」批判を受ける現実
そんな藤本に決勝後の取材で初めて校歌は歌えるのか尋ねてみた。藤本は急に真剣な顔つきをした。そして、少し間を置き、力強く返してきた。
「はい!」
さすがキャプテン。見本のような答え方だった。
京都国際の選手はほとんどが関西圏出身だが、藤本は福岡出身だ。「守備が好き」と話す藤本は、2020年に京都国際から日本ハムにドラフト3位で入団した上野響平(現オリックス)の守備に一目惚れし、自ら京都国際に入部志願書をFAXしたのだという。さまざまな批判にさらされたが、その最初の志が藤本を支えていた。
「京都国際に入ったのは、小牧(憲継/監督)さんのもとで野球がしたいという思いだけでした。なので入ってから、いろいろ言われていることを知りました。(校歌のことだけでなく)僕たちのことを言われていることもあったので、そこは辛かったんですけど、小牧さんだったり、応援してくれた方々に感謝の気持ちを伝えるには勝つしかなかったので、絶対に勝ってやろうと思っていました」
藤本にも優勝したあとに歌った校歌の感想を尋ねた。
「ちょっと違ったんですけど……、あのときはもう優勝インタビューのことしか頭になかったです」
やや逃げられた気がした。
2年生の声も聞きたかった。彼らはもう1年、勝つたびに韓国語の校歌を歌わなければならないのだ。「5番・ライト」の長谷川颯は遠慮気味にこう漏らした。
「そうですね……。もう少し、考えて欲しいですね」
「校歌は触れるべきでないのか…」小牧監督に直撃
監督の小牧はどうだったのだろう。優勝して聞く校歌は、本当に「何もない」ものだったのだろうか。
小牧は笑いながらも校歌のことについて触れられることを明らかに嫌がっているようだった。
取材陣の質問に対し、小牧は、必ず最後のフレーズで笑いに転化しようとした。それは関西人独特の気質のようでもあり、あまりにもややこしい背景を持つ高校の監督に就任したばかりに身につけざるをえなかった処世術のようにも思えた。
試合直後の囲み取材は記者が殺到する。その中でまた校歌のことを聞くのもためらわれたし、笑いに逃げられるのも嫌だった。
なので決勝翌日、宿舎を出発する前に設けられた5分の取材にかけようと思った。
〈つづく〉