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甲子園の風BACK NUMBER
根尾昂、藤原恭大…大阪桐蔭“黄金世代”を「最も追い詰めた」“偏差値68”府立高監督がなぜ野球インフルエンサーに?「学校に迷惑をかけましたし…」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/18 11:00
4人がプロ入りした2018年の大阪桐蔭。甲子園春夏連覇の偉業とも相まって「黄金世代」と言われるが、府立高に苦しめられた一戦もあった
名物監督が「異動」になった工業高校は…?
都島工には機械科、建築科など6つの科があって都市工学科をはじめ、ユニークな教育プログラムが用意されている。
じつはこの高校は侮れない。
13年に工業系としては全国では初めてスーパーサイエンスハイスクールに指定されたり、大阪工業大学と高大連携に関する協定書を結ぶなど、進学にも実績がある。入学するには相応の学力が必要だ。令和5年度でいうと、大学へは大阪大など国公立に7名、関大、同大、立命大を含め私立の進学はのべ約170名の合格者を出している。これは約60パーセントの生徒数にあたって、専門学校に進むものもいて進学率は高い。
一方、就職も求人倍率11倍。就職先の企業はパナソニック、近鉄、熊谷組、関西電力など日本有数の大会社を挙げれば枚挙にいとまはないし、入社試験の合格率は100パーセントだ。
「鉄道系は関西一の就職だそうです。みやこう(都島工)だから一流企業から求人が来てると聞いてますし、進学では国立大学に工業推薦枠で入る生徒もいます」
こう言って胸を張るのは野球部監督で体育科教師の小宅健太郎(37歳)だ。
大阪メトロ谷町線都島駅の改札から徒歩1分。正門を入ると『臨幸記念碑』と彫られた石碑がある。昭和4年6月、昭和天皇が視察され(御臨幸)、それを記したものだ。校舎の最上階資料室には、その時に天皇が座った椅子が展示されている。歴史と伝統を誇る工業高校なのだ。
学校行事の都工祭の体育祭にも伝統が刻まれている。6つの学科ごとに縦割りでチーム分けされる対抗戦で、熱気は在学生だけにとどまらない。学科ごとにOB会があって卒業生が差し入れをして応援するなど、ライバル意識とプライドを受け継いでいる。優勝したらOBが焼肉をご馳走するなんていう科もあるそうだ。
野球部は1951年夏の甲子園に出場していて、1回戦で早実に勝つなど2勝してベスト8まで進出している。燦然と輝く球史の一つだ。
小宅は大商大高校、天理大の出身。私立の通信制高校の教師だったが、高校野球の監督になりたい、と大阪市の採用試験を受けて合格。19年に都島工に赴任した。
「実家が自転車でここから数分のところ。みやこうが初任で縁を感じました」