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甲子園で初実施「朝・夕2部制」現場のリアルな声はどうだった? 出場選手&監督が語るホントのトコロ「夜に始まるなんて、試合も練習も…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/12 06:00
今夏の甲子園から導入された「朝・夕2部制」。開会式があった初日の第3試合・岐阜城北-智弁学園戦は試合終了が21時半を越えた
最大で1日4試合を行う甲子園において、昨年までは第1試合を除けば開始時間は「予定」でしかなかった。そのため、中崎は自分たちが戦う前の試合を見ながら「この回からアップを始めよう」といったルーティンを定めていた。それが、今年は15時に球場入りをすると「15時30分からストレッチ」「16時からキャッチボール」といったタイムスケジュールを組むことができたのだという。
「前までは、自分たちの試合が始まる時間が読めないなか調整する難しさがありました。そのなかでもしっかりと調整はできてはいたんですけど、今年は開始時間がわかっていたなかでできたんで準備しやすかったです」
ピッチャーのコンディションにおける優位性について、「暑さも関係しているのではないか」と推察するのは、9日の試合で南陽工に勝利した菰野の森田亮太監督である。
150球を費やしながらも2失点完投と、上々のパフォーマンスを披露した2年生エースの栄田人逢を称えつつ、こう加えた。
「日差しや暑さへの対策はさせていたんですけど、やはりピッチャーにとっては大きかったんじゃないでしょうか。栄田は序盤で50球くらい投げましたけど(4回まで59球)、これが日中の試合だったなら、おそらくピッチング内容に違いが出てきたと思います」
敗者側からは2部制への「準備が必要」の声も
ここでは、主に勝者側の印象を取り上げているが、そこには理由がある。敗れたチームの監督や選手は悔しさが色濃く残り、試合について述べるので精一杯だったからである。
そのなかで、菰野に敗戦した南陽工の山崎康浩監督は「負けてしまえば、あれもこれもと思ってしまうんですけど」と、反省材料を模索するように本音を打ち明けてくれた。
「夜に始まるのなんて、試合も練習もそんなにないでしょ。そういうところをね、今後、ちょっと考えていかないといけないかな、と。でも、応援する方にとってはいい環境だったんじゃないかな。涼しかったですしね」
大きな混乱がなく、現場からの反応が良好だった「2部制」は意義があったのだろう。
改革には議論がつきものだ。
それが本当の意味での「選手ファースト」ならば、新たな取り組みはどんどん導入していくべきである。