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大阪桐蔭「2年ぶり夏の甲子園」初戦快勝のウラで起きていた“異変”…センバツ4番・ラマルがなぜ代打に?「下から這い上がってやろうと…」
posted2024/08/09 17:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Nanae Suzuki
ラマル・ギービン・ラタナヤケの表現によると、その“儀式”は「目をつむってボーっとしている」のだという。
興南との初戦。大阪桐蔭ベンチが動き出したのは6回表だった。
「準備しといてくれ」
監督の西谷浩一から指示されたラマルが、ベンチ裏のスイングルームへと向かう。ゲームが開始されたばかりで緊張感が漂う初回や、5回終了時に設けられている10分間のクーリングタイム中に「体を冷やさないように」と、バットを振りながら体を温めてはいたが、監督から代打を示唆されたラマルはさらに集中力を高めようと準備に入った。
目を閉じ、実際に甲子園の打席に立っている自分を想像する。今、マウンドに立っているのは興南の左腕・田崎颯士だ。ストレートは140キロを超え、スライダーもいい。
ラマルいわく「ボーっとした」のち目を見開き、自らに強く言い聞かせる。
「自分のスイングをすれば絶対に打てる」
「代打・ラマル」が甲子園に与えた衝撃
7回、2アウト一塁の場面でラマルの代打が甲子園球場にコールされる。
低めのきわどいコースのボールを冷静に見極める。3球目。真ん中やや高めのストレートに対して、シャープにバットを振り、捉えた鋭いゴロがレフトへ到達した。
「ストレートを狙っていたわけではなく、来たボールをしっかりと振る準備はしてきたので。ヒットになったことはよかったです」
夏の甲子園初打席初ヒット。
上々のスタートである。その一方で、この打席はちょっとした衝撃も与えた。
代打・ラマル。
高校通算33ホームランのプロも視線を送る長距離砲が、控えに回っているのである。