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起こせなかった「令和の金農旋風」…涙の弟・吉田大輝に見た“あの夏との違い” 2018準優勝メンバーのコーチは「『輝星よりも』と思わないとダメ」
posted2024/08/10 17:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
熱き旋風の記憶が蘇る。
アルプススタンドから轟く『Gフレア』。ブラスバンドの旋律に合わせ、スタンドも手拍子でチームを後押しする。
2018年、夏。
秋田大会から3年生レギュラー9人で戦う金足農は、甲子園を味方につけていた。鹿児島実、大垣日大、横浜、近江、日大三。全国有数の強豪校を撃破した公立校は、決勝でセンバツ王者の横綱・大阪桐蔭に屈したが、ドラマのような快進撃は日本中を熱狂させた。
6年前のあの“金農旋風”を感じた9回
翻って2024年、夏。
甲子園では再びGフレアが反響していた。
西日本短大附戦の9回。0-6と敗色がちらつく窮地で、先頭の近藤暖都から3連続ヒットで1点を返すと、一塁側アルプススタンドのボルテージが一気に高まっていく。
6年前の主役・吉田輝星(現オリックス)の弟で、2年生ながら兄と同じ背番号「1」を身につける大輝は、ベンチで泣いていた。
「お前を負け投手にさせないからな!」
3年生たちが繋ぎのバッティングを体現してくれているだけで、涙があふれてくる。
6-1とし、なおもノーアウト二、三塁のチャンスで2点目の犠牲フライを放った相馬英典が、バッテリーを組んでいた先輩キャッチャーとして吉田への想いを明かす。
「マウンドを降りてから悔しそうにしていたんで。県大会はずっとあいつに助けられてきたんで、甲子園では『自分たち3年生が支えよう』という想いがありました」
相馬の打席後もエラーとヒットで差を2点に縮め、金足農が6年前に演じた、予定調和の展開を覆す激戦が脳裏をよぎる。
しかし、轟音はここで止まった。