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カープ新井監督も認める10年目の成熟…「初球は振らない」野間峻祥が4年越しの打撃改造で花開かせた勝負強さ
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/12 11:00
31歳で迎えた10年目の今季、誰もが認めてきた野間の潜在能力がいよいよ全開になろうとしている
「(感覚が違いすぎて)やり始めたときは気持ち悪かった。シーズンずっとそんな感覚だったけど、段階を踏んでやろうと決めていたので、途中で投げだすことはやめようと。まずは幹をつくって、そこから徐々に枝葉を付けていった感じです」
度重なる下半身のケガや新型コロナウイルス感染もあり、順調ではなかった。規定打席に満たない中、それでも21年は.272、22年は.312の打率を残し、感覚の向上とともに数字でも変化も実感した。
新井貴浩監督が就任した昨季は2度、負傷離脱がありながらも、4年ぶりに3桁108試合に出場した。2番という新境地でつなぎの打撃に開眼。得点圏打率.348と勝負強さも光った。現役時代もともにプレーした新井監督は野間の成長に目を細める。
「一番変わったのが、自分がやるんだという自覚の部分じゃないかな。これまではどちらかといえば、キクさん(菊池涼介)がいるとか、アキさん(秋山)がいるからとか、二番手、三番手として控えめだったところもあったように思う。それが今は『自分が』という思いを感じる」
主軸としての自覚
野間は22年に野手主将を務めた。主将制がなくなった昨季も、本拠地試合終了後のあいさつ時には列の先頭に立って音頭をとった。3連覇のチームで学び、苦しい時代を過ごす中で、チームのためになることを考えてきた。主軸としての自覚、台頭する若手の道標になる自覚が強くなった。
「18年は年上の選手ばかりで自由にやらせてもらった。今は年齢も上がって、技術的なところも自分の中では少しずつだけど対応できるかなというところまできた。そういう選手がチームに1人はいないと、なかなかつながりが生まれない。今でいうと矢野(雅哉)は僕と似たタイプだと思うので、しっかりと示していこうと思っています」
今季は開幕直後から1番に入る試合が多く、2番や3番を打つこともある。7月5日の中日戦では初めて4番にも入った。58連続単打を記録するほど長打力に欠けていた昨季からうって変わり、今季は3シーズンぶりの本塁打をマークした。二塁打と三塁打の合計はキャリアハイの22年に迫る勢いだ。苦しい時を経て、心技体が充実。高い潜在能力から歴代監督が惚れた逸材が、成熟のときを迎えようとしている。