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カープ新井監督も認める10年目の成熟…「初球は振らない」野間峻祥が4年越しの打撃改造で花開かせた勝負強さ

posted2024/08/12 11:00

 
カープ新井監督も認める10年目の成熟…「初球は振らない」野間峻祥が4年越しの打撃改造で花開かせた勝負強さ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

31歳で迎えた10年目の今季、誰もが認めてきた野間の潜在能力がいよいよ全開になろうとしている

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 初球は振らない──それがカープ野間峻祥のリズムである。

 プロ野球はデータ全盛の時代だ。初球から振ってこないという傾向が分かれば、相手バッテリーはカウントを有利に進められるよう、当然ストライクを取りやすい球を投げてくる。野間がまったく振らないわけではない。ただ、今季ここまで315打席に立ったなかで、犠打や死球をのぞくと初球を振ったのは5度しかない(データは8月8日時点。以下同様)。試合の流れや相手バッテリーとの駆け引きの中で勝負どころを嗅ぎ分け、振る。

 今季初めて初球をスイングしたのは4月12日、シーズン34打席目となる巨人戦(東京ドーム)の1回だった。先発の戸郷翔征がストライクを取りに来たような浮いた真っすぐを強振。それまで33打席の初球見逃しを布石としたような狙い打ちで右翼フェンス直撃の二塁打とし、先制点の起点となった。

 2度目の初球スイングは99打席目の5月5日のDeNA戦。ファウルとなったが、忘れたころに野間の初球打ちはやってくる。振ってこないというデータを残しても、スイングする確率がわずかに残るだけで相手バッテリーは警戒を解けなくなる。

 今季初球で勝負がついた打席は7打席しかない。その中には死球やバントもあり、結果は5打数3安打で打率.600。長打率は.800、OPSは1.476という数字がさらに相手バッテリーに初球への警戒心を与える理由になっている。

振らない野間が打線に与える影響

 初球を振らないだけでなく、相手に球数を投げさせるのも野間のスタイル。初球ストライクを取られても、不利なカウントからでも粘って、カウントを整えながら仕留める。今季1打席当たりの被投球数を示した指標P/PAはリーグトップのヤクルト村上宗隆の3.40に迫る同2位の3.39だ。その上で、ここまでリーグ5位の打率.292を残している。

「昨年から2番を打たせてもらって、そうやったほうがいいのかなって。そのほうが自分としても変に考えず打席に入れるし、やりやすかった。さらに言うなら、自分の前に初球から打ってくれる選手がいたほうがいい」

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