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カープ新井監督も認める10年目の成熟…「初球は振らない」野間峻祥が4年越しの打撃改造で花開かせた勝負強さ 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2024/08/12 11:00

カープ新井監督も認める10年目の成熟…「初球は振らない」野間峻祥が4年越しの打撃改造で花開かせた勝負強さ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

31歳で迎えた10年目の今季、誰もが認めてきた野間の潜在能力がいよいよ全開になろうとしている

 広島打線には初球から積極的に振っていく選手が多い。チーム内のバランスを冷静に見て、感じ取った役割でもあった。たとえば今季、野間の前後を打つことが多い秋山翔吾、小園海斗も積極的なタイプ。ただ、攻撃的なタイプばかりが並ぶと、ハマらなかったときの代償もあるだけに、野間の存在が効いている。

 初球で終わった打席数は野間の7に対し秋山が25、野間の後ろを打つことが多い小園は73を数える。小園の初球の打率.314は積極打法が強みであることを教えてくれる。自分の前に球数を稼ぐ野間がいるからこそ、伸び盛りのスラッガーは迷うことなく初球から振りに行けるのだ。

 そんな野間の打撃スタイルは一朝一夕にできあがったものではない。挫折から見いだした自分らしさの形である。

「僕は小園みたいに(初球から)合わせるのが苦手だったんです。若いときはそれができなくて、真っすぐで空振りやファウルをとられて、最後は(縦の変化球で)落とされて終わり、みたいな打席が多かった」

打撃改造を決意した理由

 もともと初球から打ちに行くタイプではない。ただ、出番が限られた若手の頃は、初球から振っていく必要があった。リーグ3連覇する2018年に丸佳浩の離脱の穴を埋め、初めて規定打席に到達した。打率.286、5本塁打。だが、翌19年はシーズン序盤に孤軍奮闘の働きぶりを見せるも、シーズン途中には二軍降格を味わった。

「パタリと打てない時期が続いて、その次の年はほとんど出られなかった。それがあったから、ゴロッと変えられたところはあるかもしれない。長打を捨てたわけじゃないけど、バットの軌道からもう一度、ゼロから思い切り変えられた」

 投手の高速化が進む中で直球を捉えきれないスイングが増えていた。直球を苦にすれば、必然的に変化球への対応も苦しくなる。バットを短く持ち、可能な限り球を呼び込み、トップからインパクトまで最短距離でバットを出す。そこに生きる道を見出した野間は21年から打撃改造に取り組み始めた。

【次ページ】 主軸としての自覚

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