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「このままじゃ終わるな…」DeNA京山将弥26歳を、“イップスで一軍登板ゼロ”の崖っぷちから「想像もできなかった成績」に蘇らせた言葉
posted2024/08/12 11:01
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Sankei Shimbun
「シーズンが始まるときには想像もできなかった成績で進んでいるなと思っています」
横浜DeNAベイスターズの京山将弥は静かに、そして感慨深い表情でそう言った。
今季はここまでリリーフとして20試合に登板し、2勝1敗5ホールド、防御率は0.95と上々の成績を挙げている。登板によってはボールが暴れ不安定さを露呈することもあるが、苦しいDeNAブルペン陣にあって、京山の存在は非常に大きいものになっている。
しかし振り返ればプロ7年目の昨季は、一度も一軍昇格することができない苦しい時間だった。ゆえに冒頭の京山の言葉は重く響く。
壁に当たっていた理由
京山は、2016年のドラフト会議で4位指名され、近江高からDeNAに入団した。2年目の2018年シーズンは先発として6勝を挙げ、将来を嘱望される存在に一気に躍り出た。キレのあるストレートに加え多彩な変化球、そして制球力に長けたスマートな投球は、十分な可能性を秘めたものだった。また入団以来、フィジカル面の強化も含め球速アップに努め、2018年にMAX146キロだったストレートは、現在155キロをマークしている。
だが、なかなか成果を上げることができない。チャンスはもらうのだが、ゲームを作ることができず、ここ数年は壁にぶち当たっていた。そして昨季は前述したように一軍登録なし。ファームではリリーフとして39試合で投げ、防御率は3.06。決して悪い数字ではなかったが、与四球が多く、さらに10暴投と制球力に長けた京山らしさが影を潜めていた。一体なにが起こっていたのか?
「昨年は投げる感覚が上手くつかめずに、めちゃくちゃボールが抜けてしまったり……野球があまり楽しくないなって」
少しだけ顔をゆがめ京山はそう言った。原因は、春のキャンプでコンディション不良のまま投げ込んでしまい、フォームのバランスを崩してしまったからだった。
「我慢して投げていたらおかしくなってしまって、ボールを押し出すような癖がついてしまったんです」
投手の体と心は繊細だ。思うように投げられない日々がつづき、京山は自分がイップスのような状態になったことを自覚した。コントロールが乱れ、平常心を保とうと焦れば焦るほど、力んでしまいボールはあらぬ方向へ抜けていった。
野球が楽しくなかった
「投げることは好きなんですけど、投げるとどこに行くかわからない。本当、楽しくなかったんですよ……」
好きな野球と心の距離が遠のいていく。