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起こせなかった「令和の金農旋風」…涙の弟・吉田大輝に見た“あの夏との違い” 2018準優勝メンバーのコーチは「『輝星よりも』と思わないとダメ」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/10 17:00
6年前の「金農旋風」の再現を目指した金足農業(秋田)のエース・吉田大輝だったが、兄・輝星の代のようにはいかなかった
感情を押し殺すように答える吉田を慮るように代弁するのは、甲子園準優勝メンバーで母校のコーチを務める高橋佑輔である。
「そのことについて本人は口にしませんけど、『追いつきたい』とは思っているはずなんです。だから、『輝星に』じゃなく『輝星よりも』と思わないとダメだよ、ということは話しています。本人も甲子園で投げて、まだまだ力が足りないことがわかったでしょうから、ここからもっと頑張ってほしいですね」
高橋が求めるように、この敗戦は兄を超えるためのきっかけとなるはずだ。
監督の中泉一豊もコーチと同じ認識である。
吉田の飛躍を促す意味合いを込めながら、輝星と大輝をこのように比較する。
「自分からなにかをしようとする主体性が、まだ足りないような気がしますね。輝星も高校2年生の秋に負けてから、自分から走ったりトレーニングしたりするようになりましたし、努力しないと成長はありませんから。チームに『俺たちがなんとかしてやる』と思わせるようなピッチャーになってほしいですね」
3年生が「負けさせない」と奮い立ったように、2年生エースがこの甲子園でチームから信頼されていたのは間違いない。監督が「まだ」と注文を付けるのは、それだけ吉田への期待値が高いためである。
「甲子園にふさわしくないと思った」
吉田には来年の春夏と、甲子園に来るチャンスが2度、残されている。
「甲子園にふさわしくないと思ったので、もっと成長するために秋から冬にかけてしっかりトレーニングを積んでいきます」
エースは、聖地への帰還を約束する。
そのときこそ兄を超え、吉田大輝として新たな「カナノウの風」を巻き起こす。