3年生の意地と甲子園の大応援。目を真っ赤に腫らした2年生エースは、試合後、その光景を描写するように言葉を編んでいた。

「マウンドで投げ切れなかった悔しさがあるなかで、『本当に勝てるんじゃないか』と思うくらい3年生の先輩方や同級生が死ぬ気で繋いでくれて。Gフレアが鳴って、甲子園のスタンドも『ここまで応援してくれるんだ』って感動しました」

　吉田にとっての甲子園初マウンドは「厳しさ」を教えられた場所となった。

　ほぼひとりで投げ抜いた秋田大会後、ボールの走りをより良くしようとキャッチャーの相馬と相談し、この試合で初めてノーワインドアップモーションで臨んだ。

　初回から得点圏にランナーを背負う苦しいスタートとなったが、2回には自己最速タイとなる146キロのストレートで押す場面も目立ち、本人も「低めのボールの伸びはよかった」と一定の手応えは得られた。しかし、変化球のコントロールに苦しみ、相手打線にコースを見極められ、甘いボールを捉えられた。

　そして、7回5失点でマウンドを降りた。

「初戦の厳しさを痛感しました」

MAX146kmの直球で押すも7回5失点で降板した吉田　©JIJI PRESS

「輝星は楽しんで投げていたのがすごいなって」

　敗戦の弁を訥々と語る吉田には、輝星についての質問が矢継ぎ早に飛ぶ。答えは短いながらも、弟は自分の言葉で兄を語る。

「そういうところでプレッシャーを感じることなく投げられましたけど、同じ舞台に立てて嬉しかったです。甲子園は1球、1球にざわめいたり、こっちに味方をしてくれたりする雰囲気のなかで、輝星は楽しんで投げていたのがすごいなって思いました」

　兄との比較。それは、避けては通れない道なのかもしれない。

「自分は、自分として投げているだけです」

【次ページ】　「甲子園にふさわしくないと思った」