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大阪桐蔭「2年ぶり夏の甲子園」初戦快勝のウラで起きていた“異変”…センバツ4番・ラマルがなぜ代打に?「下から這い上がってやろうと…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2024/08/09 17:02
センバツで4番を打っていたラマル・ギービン・ラタナヤケ。今夏はスタメンを外れているものの西谷浩一監督の期待も背負った背番号は「3」
現在、彼の主戦場であるファーストには内山彰悟がスタメンで出ているが、それについて監督の西谷は「守備力は彼のほうがあるので」と明言するくらいだ。
ただし、興南戦でその内山にラマルを代打に送ったように、監督とてバッティングは強力な戦力と判断している。
「バッティングは彼の持ち味ですし、力もありますんで。使いたいときにすぐに行ける準備だけはしてもらっています」
大阪大会序盤でのラマルは、「打ちたい」「自分が打って勝たせたい」といった気概が先走るあまり結果を出せず、そこも控えに回る一因となった。だが彼は、立場が変わることによって自らのストロングポイントを冷静に見つめ直すことができたのだと頷く。
「大きいの(ホームランなどの長打)を打とうとして、目線が上がってしまうから右肩が下がって力がない打球ばかりになっていたんで。気持ちの部分も含めて、そういったところは修正できていると思います」
力まず「軽く振る」くらいのイメージでバットを出したほうが、力強い打球を飛ばせるようになっていった。それが、大阪大会準々決勝でのホームランや興南戦でのヒットなど、代打でも結果を出せる要因となっている。
西谷監督がラマルに与えた背番号「3」
だからといって、甲子園でも「ひと振りに懸ける」立場だけで終わるつもりはない。そのことを裏付けるかのように、西谷はラマルに甲子園でも背番号「3」を与えている。
「それはもう、『やってくれる』という期待です。ファーストでも出られますからね」
監督の想いに応えるように、ラマルも「任されているんだな、と思うところはあります」と、顔を上げて責任感を胸に秘めるが、この夏に“元主砲”が果たすべきは逆襲だ。
多くは語らない。ただ静かに心を燃やす。
「『下から這い上がってやろう』という気持ちは、あります」