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女子スケボー「笑顔の演技」で話題の16歳“鬼姫”草木ひなのとは何者か?…「新世代の突き上げ」「度重なるケガ」五輪出場のウラにあった波乱万丈
posted2024/08/09 11:04
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
キュートなルックスとは裏腹に愛称は「鬼姫」。
滑走前に見せる笑顔、予選通過を決めた最終滑走での”鬼”のメンタル、全てのトリックを成功させることはできなかったが、決勝では猛スピードでセクション(障害物)へ突っ込み、ゴン攻めならぬ”鬼”攻めする姿勢を貫いた。愛称に違わぬ滑りにファンになった方も多いだろう。
草木ひなののことだ。
「鬼姫」由来はスケートスタイルから
「鬼姫」の由来は猪突猛進型のスケートスタイルで猪みたいというところから来ており、当初は「もののけ姫」と呼ばれていた。同映画に出てくる乙事主や巨大な猪神達は野生であり、人知を超えたパワーがある。昔からそれくらい激しい突っ込み方をしていたことからそう呼ばれていたのだが、上達に連れて”もののけ”が”鬼”へとグレードアップ。「鬼姫」が定着していった。
そんな彼女のルーツを探ると、茨城県つくば市にあるAXIS SKATEBOARD PARKは外すことができない。
ここはスケートボードコミュニティの間では有名な場所で、パークスタイルで見られる湾曲した滑走面を主とするジャンルでは、元祖・聖地とも呼べる場所。すると集まるスケートボーダーは、当然そのジャンルに精通した玄人になる。
専門的な言葉で言うと「ヘッシュ」な大人達といえば良いだろうか。草木はそこに集まるスケートボーダーのコミュニティで叩き上げられた、「カルチャー」の中で育ったスケートボーダーなのだ。
彼女の最初のライバルは母親だった。母親や周囲のガールズスケーターに負けたくない一心から、「私の方が上手くなってやる」をアピールしたかったのだろう。そこで好奇心旺盛だった彼女は、スケートパークに集まる玄人に1から10まで全てを教えてもらうことでどんどんと成長していったのだが、その過程で掛けられたある言葉が彼女をさらなる高みへ導くきっかけとなった。
「もっと自分で考えてスケボー練習するようにならないと先はねえぞ」
まだ幼かった彼女は呆気に取られたそうだが、そこから明らかに意識が変わったという。