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核心にシュートを!BACK NUMBER
富永啓生はなぜ「使われなかった」のか? プレー時間は1試合平均わずか2分…日本バスケ“史上最高のシューター”がパリ五輪で輝けなかったワケ
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2024/08/07 17:00
日本史上最高のシューターの呼び声も高かった23歳の富永啓生だが、パリ五輪ではほとんど出場機会をえることができなかった
「最初の2試合で(富永の)マッチアップは私にとって好ましいものではなかった。(富永とポジションが重なるフランスのエバン・)フルニエとの関係でいえば、フランスのオフェンスは彼を通して進んでいくし、ピック&ロール(※他の選手と連動した2対2の崩し)も少しある。だから、そこに富永が入るのは厳しいと考えた。
そして(富永と同じSGでドイツの主力であるアンドレアス・)オブストはいつもタフだ。タフなアニマルなんだよ! だから自分たちのポイントガード(PG)をオブストのマークにつけ、うちのビッグマンを相手のPGのマークにつけることにした。そのような形では、富永にプレーイングタイムを与えるのは難しい。そこに八村も絡むのでディフェンスのローテーションはさらにタイトになっていた」
W杯王者のドイツは選手層が厚いから、富永を起用しづらいのはわかる。
ただ、フランスのフルニエが出場したのは30分15秒に過ぎない。何より、この試合は延長戦にもつれ込んでおり、彼がベンチに座っていた時間は約15分もあった。にもかかわらず、結果的に富永は3試合で最も少ない6秒しかコートに立てなかった。
これほどまで富永を起用しないのであれば、昨年のW杯同様に守備で計算できる原修太を入れるべきだったという声が挙がるのもわかる。
とはいえ、ホーバスHCは同じポジションに似たタイプの選手を置くことを好まない。だから、守備力に長けた吉井がSGを務めるのであればなおさら、代わりに攻撃力のある選手をメンバーに入れたかったのだろう。守備で計算できる原が選ばれなかった理由もそこにある。
ただ、ここまで挙げた1つ目と2つ目の理由は、決定的要因ではない気がしている。
富永を起用できなかった「決定的な理由」は…?
というのも、ドイツやフランスと戦うことは今年3月の時点でわかっていたからだ。しかも、ドイツとは昨年のW杯で、フランスとは昨年のW杯直前の強化試合で実際に対戦している。特徴はある程度は把握できていたはずだ。
富永をメンバーに入れながらほとんど起用しなかった理由としては、次に挙げるものが大きいのではないだろうか。
<次回へつづく>