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河村勇輝でも八村塁でもなく…フランス戦“数字で見る”最大の功労者は?「クラブでは控え」だった26歳・吉井裕鷹は代表の救世主になれるか
posted2024/08/02 17:03
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kaoru Watabe/JMPA
「オレら、雑草魂!」
昨年のバスケW杯でヨーロッパのチームから歴史上初めての勝利をつかんだ後、ロッカールームに戻るなり、そう叫んだ選手がいる。吉井裕鷹だ。この試合に出場できなかった選手や、出場時間のなかった選手たちと熱い抱擁を交わしていった。
NBAの舞台でプレーしてきた渡邊雄太や八村塁がバスケ少年少女の憧れであるならば、吉井は彼らに勇気を与える存在だ。現在の日本代表において、吉井ほどバスケ界のメインストリームとかけ離れたところからステップアップしてきた選手は他にいないのだから。
吉井はパリ五輪初戦のドイツ戦ではスタメンに名を連ね、40分中31分4秒でプレーし、10得点、6リバウンドを記録。多くのファンがチームMVPに挙げる活躍を見せた。
ただ、あの試合すら吉井にとっては通過点だった。続くフランス戦では延長を含めた45分中28分52秒もコートに立った。そして、特筆すべき貢献を見せた。
特筆に値する吉井のチームへの貢献度
バスケットボールの世界では、その選手が出場していた時間帯のチーム全体の得失点差を表わす「+/-」というデータ指標がある。例えば、あるチームが10点差で負けたとしても、そのチームのAという選手がコートに立っている間に自チームが40点、相手チームが30点を決めた場合には「+10」となる。
件のフランス戦ではチーム最多の29得点を記録した河村勇輝でさえ「-1」だった。では、日本の選手のなかでダントツの結果を記録したのは誰だったのか。
吉井である。なんと「+7」を記録したのだ。
吉井が決めたのは2点だけだったのだが、攻撃では味方がフリーになるようにと身体を張り、守備での貢献がすさまじかった。NBA選手がひしめくフランス代表を相手に、空中戦でもその前のポジション取りでも互角の戦いを見せた。
ただ、繰り返すが吉井はエリート選手ではない。