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富永啓生はなぜ「使われなかった」のか? プレー時間は1試合平均わずか2分…日本バスケ“史上最高のシューター”がパリ五輪で輝けなかったワケ
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2024/08/07 17:00
日本史上最高のシューターの呼び声も高かった23歳の富永啓生だが、パリ五輪ではほとんど出場機会をえることができなかった
八村加入でSGに求められた「守備力」
各ポジションのW杯における主要出場選手を矢印の左側、五輪でのそれを右側に示すと以下のようになる。
PF:渡邊→八村(※欠場した3戦目は渡邊)
SF:馬場&吉井→渡邊(※八村が欠場した3戦目は吉井&馬場)
SG:富永&比江島→吉井(※八村が欠場した3戦目は比江島&馬場)
実際、攻撃の中心となった八村の平均得点は全選手のなかでヤニス・アデトクンボ(ギリシャ)に次ぐ2位で、22点だった。その結果、W杯で得点源となっていたSGの選手には、一転して守備力が求められるようになった。
そうした変化により馬場雄大と富永、そして(八村にフランス戦でアクシデントが起こる前までは)比江島慎が大きな影響を受けた。以下は、その3選手のW杯と比較した1試合の平均出場時間の変化だ。
・富永:17.9分→2.6分(約85%減少)
・馬場:21.7分→9.9分(約54%減少)
・比江島:14.7分→13.6分(約4%減少)
※比江島の出場時間は、ドイツ戦終了時は6.4分(約57%減少のペース)
八村が得点力の部分では期待に応え、SGに求められる守備のタスクが劇的に増した以上、W杯で得点を期待されてSGを任された選手たちの今大会の出場時間が減るのは避けられなかった。
では、八村が欠場したブラジル戦はどうだったか。
守備が効果的に機能せず、屈辱的な3P成功率を相手に記録されてしまった。バスケの世界ではチームの3P成功率が40%を超えれば上出来と言われる。だが、あの試合のブラジルには、前半は驚愕の85%の成功率で、11本もの3Pを許した。そして、1試合を通しても超高確率の61%で、17本も決めさせてしまった。
今大会の課題は明らかに守備面にあった。そうなると、3Pの能力に秀でた富永でもチャンスを得るのは簡単ではなかった。
2つ目の理由が、守備のマッチアップの問題だった。
五輪の最終戦の後にトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)が外国メディア向けに語ったコメントを引用する。