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「怪しすぎ…」「出来レースっぽい」柔道“疑惑のルーレット”…なぜ日本人に不信感を抱かせた?「ボタンを押したのは私達じゃない」フランス柔道トップは主張
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2024/08/06 19:30
ルーレットが「+90kg」で止まった瞬間。パリ市内のパブリックビューイング会場ではフランスファンが熱狂した
私たちはまだ、「電子」的なものへの根本的な不信感があり、そこに細工の余地があるのではないかという疑いを持っている。ところが、人の手を通すことによって透明度は一気に上がる。
混合団体について国際柔道連盟(IJF)が定めたルールは、
「代表戦の対戦階級は、ルーレットによる無作為抽出」
というもので、前回の東京大会では、実に3試合で代表戦が行われ、さして問題にはならなかった。今回はやはり、開催国のフランス、しかもリネールが絡んでいたことで議論が沸騰した。
面白いことに、フランス国内でも疑問の声が上がっていた。フランスのラジオ局「RMC」は、フランス柔道連盟のステファン・ノミス会長の見解を報道した。
「ルーレットのボタンを押すのは我々ではない。IJFがやっている。不正がないように国際オリンピック委員会(IOC)も管理している」
と、フランス柔道連盟としては不正がないことを強調した。
ただし、世界から疑問が呈されること自体、IJFは公平性の担保を怠ってきたのではないか、と私は思う。
“アナログな仕組み”で良いのでは?
今回の疑念をもとに、代表戦の仕組みを変える努力をするべきだと思う。それが統括団体の説明責任につながるのではないか。電子ルーレットという「軽い仕組み」は金メダルを決める場にふさわしくないと感じる。
たとえば、監督同士が管理者の立ち合いのもとでコイントスをして、透明のボウルに入った6階級の札を引く権利を決める。これだけでいい。誰もが納得するではないか。
ルーレットの衝撃から一夜明け、私の友人がLINE電話をかけてきたので、起こされた。そしてその友人はこう力説した(長い電話だったので抄訳)。
「生島、あの柔道のルーレットは怪しいぞ。俺はスロットが好きだ。もちろん、当てることもあれば、だいぶ損することもある。何万円とだ。でも、納得してる。少ない成功確率に賭けてるってことを自覚してるからだ。あの柔道のクルクルはいかん。出来レースにしか見えないからな!」
出来レースにしか見えない。
国際柔道連盟のみなさん、日本のスロット愛好者の声に耳を傾けてみませんか?