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フランスはパリ五輪開会式をどう見たか?「魔法のよう」絶賛する新聞、「汚らわしい」激怒する右翼…開幕前の無関心→五輪一色の世論を現地報告
text by
広岡裕児Yuji Hirooka
photograph by代表撮影
posted2024/07/30 06:02
エッフェル塔を前にセーヌ川をパレードする日本代表団
今回の開会式に関し、〈ル・フィガロ〉の編集部論説は、「私たちは現実にいたのか、それとも映画の中にいたのか、生放送だったのか、録画だったのか、陸地に、空中に、水上にいたのか?」と書いていた。
テレビ画面が“開会式会場そのもの”だった?
1964年の東京五輪は、はじめて衛星中継されたオリンピックだった。その1年前の試験放送が行われたときにはケネディ大統領暗殺が起きて、画質の悪い白黒のブラウン管に映し出された。あれから60年、ついに、テレビは“中継する”のではなく、テレビが“会場そのもの”になったといえようか。
もちろん、これまでの開会式でもビデオは使われていた。しかし、あくまでも開会式は競技場のフィールドの上でナマで行われるもので、観客はビデオの動画をスクリーンで見ると、またフィールドに視線を戻していた。
誰も全部をナマでは見られなかったけれど
ところがこのパリ大会では、誰一人として、開会式をすべてナマで見ることはできなかった。ずっとスクリーンを見て、ときどき自分の前のセーヌ川を見るのだ。30万人の観客がいたといっても、そのほとんどは、自分たちの前を各国の選手団を乗せた船が通っていくのを見ただけである。トロカデロ広場の会場にいる人々はそれよりは優遇されていたが、開会式の時間の半分以上の間はずっと、選手団が到着するのが見られるだけであった。
「このまばゆいばかりのスペクタクルの幕は下りた、行動の時だ。私たちのアスリートは、この高揚感を金に変えなければならない」と〈ル・パリジャン〉の編集部論説は述べた。
これに応えるように、フランス代表は7人制ラグビーでさっそく金メダルを獲得。開会式につづいての二の矢で、なにはともあれ、一気にフランスはオリンピック・モードに突入したようである。