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オリンピックPRESSBACK NUMBER
パリ五輪“あの開会式”のウラで観光客が悲鳴「家族連れが警察官に追い返され…」セーヌ川付近はゴーストタウン化「市民は“パリ脱出計画”も」
posted2024/07/28 11:31
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
代表撮影
「申請したのに連絡が来やしない」イギリス人女性の嘆き
「私は島の中に行けないって言うの?」
開会式2日前の7月24日朝7時、金属製のバリケードの格子を手で掴みながら、白髪の女性がつぶやく。その傍らには2人の男性警察官。セーヌ川の中洲・シテ島にかかるポンヌフ橋近く。開会式の2日以上前から、川沿いの通りが封鎖されたエリアだ。
「私はUK(イギリス)から来たんだけど、橋伝いにシテ島を経由して、歩いてルーブル美術館に行きたかったのよ。でもノートルダム大聖堂のさらに南側からしか、歩いていけないと言われてしまったわ」
警備にあたる警察官はQRコードのリーダーを持っている。そのコードを入手するためには、事前に内務省のウェブサイトで申請する必要がある。マダムは下唇を突き出し、ため息をつく。
「セキュリティコードが必要で月曜にフランス内務省のHPから申請はしたわ。すぐに『メルシー』という自動返信は来たけど、その後連絡が来やしない(笑)。20年前にルーブルまで歩いた時は“ブキニスト”という古本売りもいて、とてもよかったのよ。だから、今回コペンハーゲンからきた姪とその子どもたちにも味わわせたかったんだけど……。もう今日帰っちゃうのよね。私は金曜に帰るけど、そのくらいになって『申請が通りました』って連絡が来る気がする。開会式はTVで見る予定だったけど、楽しみがひとつ増えたわ。だって『ここが封鎖されて通れなかったところだ』なんて思いながら、見られるんだから」
観光客からすれば、フランス内務省への申請など寝耳に水だろう。警察官に追い返される家族連れ。バリケード沿いを歩き、なんとかセーヌ川近くにいけないかと必死の形相で行軍を続けるカップル……。そんな観光客の姿を何度となく見かけた。