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フランスはパリ五輪開会式をどう見たか?「魔法のよう」絶賛する新聞、「汚らわしい」激怒する右翼…開幕前の無関心→五輪一色の世論を現地報告 

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広岡裕児

広岡裕児Yuji Hirooka

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photograph by代表撮影

posted2024/07/30 06:02

フランスはパリ五輪開会式をどう見たか?「魔法のよう」絶賛する新聞、「汚らわしい」激怒する右翼…開幕前の無関心→五輪一色の世論を現地報告<Number Web> photograph by 代表撮影

エッフェル塔を前にセーヌ川をパレードする日本代表団

「逆さま旗」と「韓国の国名」には関心なし

 ちなみに、ネットで日本のニュースを見ると《五輪旗が上下逆さま》と《韓国と北朝鮮の国名を間違えた》がニュースとして大きく出ているが、フランスでは両方ともまったく話題になっていない。

 旗はテレビの画面ではわかったが、みんな“見て見ぬふり”をしたという感じ。韓国の国名については、テレビ放送では国紹介のコメントが被っていて、間違えたアナウンスが流れたこともわからなかった。

 テレビの視聴占有率は83.1%で、2300万人以上が見たという。27日に行われた世論調査では、開会式については、86%が「成功」(「とても」44%、「どちらかと言えば」が42%)と答え、オリンピックの成功については79%が「楽観的」、21%が「悲観的」だった。

アヤ・ナカムラとドラァグクイーンを批判する極右

 ただ、保守右派の一部は憤慨している。

 たしかに挑発的な演出もあった。

 たとえば、開会式出演のうわさが出た時「ここはパリであって、(マリの首都)バマコの市場ではない」という横断幕をセーヌ川の護岸にかかげた右翼団体もあった、マリからの移民のミュージシャン、アヤ・ナカムラが、フランス語の殿堂アカデミー・フランセーズの前から登場して共和国親衛隊楽隊と共演するシーン。

 そして最も批判が集中したのは、ドラァグクイーンがレオナルド・ダ・ヴィンチの有名な「最後の晩餐」を再現した場面だった。

 フランス国内だけではなく、極右で知られるハンガリーのオルバン大統領は 「彼ら(西洋人)は、神、祖国、家族との形而上学的なつながりを徐々に投げ捨てている。公衆道徳の欠如だ」と非難した。

 また、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「五輪が色とりどりなので、全体をゲイプライドパレードに変えることができたようだ」とSNSのTelegramに投稿。このほかにも「ばかげた野外開会式で、観客が何時間も土砂降りの雨の中に座ることを余儀なくされた」「パリにはネズミが溢れている」「都心はホームレスのゲットーと化した」「オリンピックの聖火は、ドラッグ中毒のラッパーが運んだ」とぼろくそに批判した。

 アメリカでも、中継のNBCはこの部分をカットした。

 この場面については、強硬左翼・LFI(不服従のフランス)のジャン=リュック・メランション氏も「『最後の晩餐』を茶化すことは好きではない」とXでつぶやいた。フランスキリスト教会などからも批判が相次ぎ、オリ・パラ組織委員会は「いかなる宗教団体に対しても、敬意を欠くことが目的ではなかった」と謝罪、IOCも受諾した。

 開会式の芸術監督トマ・ジョリー氏は、BFMTVのインタビューで、「最後の晩餐」を意識したわけではない、キリスト教ではなく祝祭と酒の神であるディオニュソスとオリンポスの神々の祝祭をイメージしていた、と述べた。

【次ページ】 これは「woke」なのか?

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